第4話城2
路地裏を出て、明るい場所で俺達は話し合った。
「さっき、イノリを捕まえてた奴らが、初心者は王様のところに行けって、
言ってたんだけど、おそらく城に行くといいじゃないかな?」
「そうだね、ゲームの王道だもんね、行ってみようよ」
俺達は、街の中心に見えている城に向かう事にした。
石畳の上を歩いていると、海外にいるような気持ちになる。
出会ったばかりの女の子(でありますように…)と並んで綺麗な街を歩くなんて、
なんか、俺、Lvが上がった気がします!
でも、意識せずに、自然に歩こう。
空も見よう。
「イツキって、ゲームはよくするの?」
「ああ、大好きだよ…おおげさじゃなくて、ゲームの為に今は生きてるかな」
「そうなんだ!私もゲーム大好き!ゲームって、リアルと違って夢があるよね!
なんか、友達とかにゲームやってるって言うと、オタクだーとか、暗いとか言われるけど、
なんなんだろうね?現実より、絶対こっちの方が面白いのに…」
「ま、いいんじゃない?わからない人は、気にしないでさ…俺達が楽しめればいいよ」
俺は、すこぶる楽しいっす!
「そうだね…せっかく、夢の「ギル2」に参加できたんだもん!楽しまなきゃバチが当たるよね!」
「ああ」
良かった…イノリは結構、普通のやつみたいだ、素直そうだし。
VRMMOって変な奴も多いから、ソロプレーの方が性に合ってたけど、
こんな感じの奴となら、一緒にいても害は少なそうだな。
さっきの男達みたいに、マナーの悪いのもいるって事は、やっぱ厳しい審査も万能じゃないって事だろうし。
システムに慣れるまでは、複数でプレイした方が、レベル上げも楽だし、情報も入って来そうだしな。
ちょっと持ちかけてみるか?
「イノリ…」
「なに?」
「良かったらさ、しばらく一緒にプレイしないか?」
「一緒に?」
「ああ…さっきの奴らに、イノリは一人でプレイする、って言ってたのを聞いたんだけどさ、俺らまだ、Lv1だろ?
もう少し成長するまでは、二人とかの方が効率いいかなって…もちろん、断ってくれてもいいけど、どうか な?」
イノリは、手をアゴの下に当てて少し考えている。
言うの早すぎたかな?
でも、こういうのは、思った時に言っておかないと、なんか色々考え過ぎて、言えなくなっちゃうんだよな。
特に俺なんか、考え過ぎてしまうタイプだからな。
まぁ…ダメモトだし、断られたっていいんだけど。
別に告白してるわけじゃないんだから、全然いいんだけど。
さっき会ったばっかりで、急に好きになるワケないんだから、別にいいんだけど。
見た感じは可愛いし、今の所は女の子っぽいけど、ネカマの可能性もあるから、断られたって別にいいんだけど。
キャラメイクで、髪がピンクっていうのは、少しなんで?って思うけど、まぁ似合って……
「いいよ!」
「え?…マジで?」
「うん…最初は私もソロプレイ派だから、一人でって思ってたけど、イツキみたいな感じの人となら、うまくやれるかも」
「良かった…断られたら、どうしようって思ってたよ…ハハ」
「うん、ごめんね!私ちょっと考え過ぎなところあるから」
「いや、俺も」
「クスッ」
イノリが笑ってる。
ゲームだってわかってるけど、なんか嬉しくなるな。
現実でも、俺がこのくらい自然に自分を出せたら、もっと楽になるのかな?
っつっても、実際はそうもいかないもんなぁ…
なんでだろ……って、イカンイカン。
また余計な事を考えてる。
素直に楽しもうっと!
俺達は城について、中に入ってしばらく歩き、玉座の間についた。
大きな扉を開けると、王様の姿をした人がパソコンでなんかしてる。
「イツキ…あの人かな?」
「た…ぶんな…なんかイメージと会ってないけど」
入り口で、コソコソ話している俺達に気づいて、王様が大声を出す。
「あ…初めての方ですよね?……どうぞこちらへ!」
おお…王様っぽさナシか。
俺達は言われるまま王様の前に行った。
近づくと、王様は明らかなつけ髭をした、女の人だ。
なんだ?
「どーも、ようこそ「ギルティ&ギルド」の世界へ、わしが王様じゃ…お前達は勇者としてこれか…ぶん…あれ?…え〜と…」
王様は、画面を見ながら棒読みで言い、おそらくセリフを見失ったんだろう。
なんだよ、運営はどうなってるんだよ……ったく…
「あの…別にいいっすよ?俺達が今から何をすればいいかだけ、教えてもらえれば…」
「……そう?済みませんね!ちょっと本職の人が急に病欠になっちゃって、あたし初めてこれやらされたんですよ?
ひどいでしょ?ってのは、関係ないですね…汗汗…」
汗って…
「えっと、なんか二人とも賢そうなんで、細かい設定は、はしょりますね!
あの……察してください!
え〜私は、いつもは事務職してます、レイナって言います。
知ってると思いますけど、二人にはこれから、罪人をやっつけてもらいます。
もし死んだら、月に3回までは生き返れます。
4回目死ぬと、来月まで復活できませんので、気をつけてください。
場所は、街の教会に行きますので、よろしく。
あと、街にある酒場の中にギルドがありますから、仲間とか情報はそこで、どーぞ。
あと……なんか、あります?」
なんかありますって……てきとーだな、この人。
それに、喋ってるとヒゲが取れるみたいで、何度も付け直してる。
世界観…どうした…
イノリが、質問をする。
「あの、経験値とかお金とかは、どうなるんですか?」
「ああ…ステータスは、見ました?」
「ええ」
「同じです。おかねーって考えてもらえれば、出ますから」
「ああ…そうなんですね」
「物を買いたい時も、お店の人に買いたいって思えば、払えますから」
「はぁ…」
「そして、今二人には3万ルギあげましたので、これで初めの装備を揃えてください……
あっ、あとコレは重要、ここは『ギルティア』って言う街なんですが、ここには罪人はいなくって、
罪人のいる『シュラ』までは、船で行きます。
船は、二時間に一回港から出てますから、時間配分を間違えないように。
あと、船も直接『シュラ』には着岸しません。
罪人が船に乗ってくると、危険ですからね。
皆さんは、船で近くまで行って、空を飛んでから『シュラ』に行ってください」
「飛ぶ!?」
俺達は驚いた。
「ええ、魔法っていう設定で飛べるようになってます。
ただ、これは行き帰り用になりますので、それ以外では使えません」
イノリが目を輝かせてる。
「魔法で飛べるんだって!イツキ!すごくない!?」
「すげーな…それだけでも、かなり価値ありそうだよね」
「え〜……そんなとこかな?
あの、もしなんかわかんなければ、いつでも来てください。
もうすぐ、シフトで次の王様が来るので、そっちの方が詳しいと思いますよ」
「あ、はい…イノリなんか聞いとく事ない?」
「うん、とりあえずは」
このレイナに聞いても、仕方なさそうだしな、また気になれば今度来よう。
「レイナさん、ありがとうございました」
「あ、すいませんね…なんか適当で…。
お詫びと言ってはなんですが、二人とも千ルギだけ、サービスしときますね」
「ああ、どーも、では」
俺達は、城をあとにする。
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