第6話音楽
高学年になりました。桜は苦手な先生がいます。
音楽の先生です。
初めて音楽の先生の授業を受けて「歌っていない!」と鋭い声で怒られてから、桜はこの先生が苦手でした。歌も歌わなくなりました。何でだか、心が氷ってしまったように感じたのです。
授業中、ずっと俯いていることは、お母さんには内緒です。
ところがある日、お母さんが授業参観にやってきました。こんな日に限って音楽があるのです。桜はいつものように口をむうと結んだままで息さえも入らないくらいでした。
家に帰ると、お母さんに叱られました。
「いつも家では歌っているのに、どうして歌わないの。お母さんは情けなくて涙が止まらなかった」
この時、桜は何も言えませんでした。
なぜ歌わないのか、自分でもよくわからなくなっていたからです。
家に帰る度、お母さんには叱られるし、同級生には無視され避けられました。
時々、悪口も聞こえました。
歌はますます歌えなくなるばかりで、学校では頭が痛くなったりぼーっとしたりする日々です。
人の話を聞き取りにくいと感じるようになったのも、この時期でした。
言われたことと違うことをしてしまうので、よく怒られました。
桜にはどうしても勇気を出して言えないことが二つあります。
一つは「もう一度言ってください」
二つは「仲間にいれて」
寂しい、と、桜は思いました。お母さんも以前のように優しくないし、友達もいない。悪口は言われるし。
私は、いつまで一人なんだろう。
誰も見ていない夜中に、泣いて祈る日々が続きました。
神様、もしいるなら、一人でいいから心から分かり合える友達をください。
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