第17話はぐれペニョ
「お腹すいたにゃー早く胃袋にうまし糧ほきゅうするにゃー」
そういいながら、いい匂いがする穴があいた簡単な窓からチキは肝っ玉母ちゃん風なドワーフ族の女性の作るシチューを覗いた。
行儀悪いな、マナー教室かよったらいいのに。
ドワーフおばちゃんはにっこりそのふくよかなほっぺを上げてこう言った。
「いいわよ、オチビちゃん、でもこの肉はペニョの肉を使っているけどいいかしら?」
「どわぁー」っと一回転して、スタッと地面に着陸したが、慌てすぎて、靴も履いてないのにタップダンスを始めた。座頭市かよ。
落ち着けチキ!
「これが落ち着いていられるかいな。ペニョほど気味の悪い動物はいいへんで」
(あぁ、最初にこの村に来た時鳴いてた動物か)
そして俺が強がって可愛いっと言った動物(なのかな?)
その本物を見てみるとなんてこったい、豚とカエルをかけあわせたような不細工な動物がわんさかいるやん。
これを食べるのか?
するとその中にはぐれて一匹のペニョがいた。
「あれは、はぐれペニョね」さっきまでシチューを作っていたドワーフが俺の横に腰に手をあてて立っていた。
こうやって近くでドワーフのおばちゃんを見ると、お髭があれば男性のドワーフのようだが、それを言えば角のはえた兜で突きされる(バイキングが被ってるようなあれだ、そうあれだ)
ペオーンプオーンと群れのペニョは楽しくお喋りしてるように見える、一方はぐれているペニョはもくもくと草をはんでいた。
俺はそのペニョの近くに行き、その巨体で不細工な顔を見上げた(猫は小さいから)
澄んだ目をしている。
★
蒼穹っと言うんだっけ?
アニメで覚えたその言葉を思いだしながら俺は学校の屋上に寝転んで腕を枕にして仰向けになり空を見つめていた。脚は組んでいてリズムをつけるように足をふっている。
『お前のような馬鹿は授業を受けても意味がない』
先生から言われた……いや発せられたその呪いの言葉で俺はすべての授業に出なくなった。
母親だけは高校だけは卒業して欲しいと懇願されたので、いやいや登校している。
居場所はあまり人が来ないこの屋上だけだ。
「山城ダァイ!!」
いつものあの声で俺はタヌキ寝入りを決め込んだ。
「嘘寝してるー、こら、起きろ!!さもなくば!」
そいつの手が俺の脇にふっと滑りこむとこちょこちょ攻撃を仕掛けてきた。
笑いたくないが俺は体をよじり涙目になった。
「やめろよ、まいどまいど」
ぱっと目を開けると巨大なお山が目の前に入ってきて、たじろいだ。
ショートヘヤでブルネットの彼女は赤いチェックの包みをフンと顔の前につきつけた。
「なんだよ」
「何って分かるでしょ? お弁当よ、また何も持って来てなかったでしょ?」
俺は頭をかいた、少し恥ずかしい。
「もうそんな時間かよ」
「そんな時間よ、はい!」
勢いよくチェックの包みを広げ、バスケットにサンドイッチが綺麗に並べられていた。
お洒落じゃねーか。
「いつもご苦労だねぇ」
パンと頭をはたかれた。
「ご苦労だねぇ、じゃないわよ、ありがとうでしょ!」
俺はおいしょっとかけ声を出すと重い腰を上げて気をつけをすると
「ありがとーござーやした」っとオーバーにお辞儀をした。
桃川愛、学校の中でもその可愛いさと、大きなお山で、数々の男どもを虜にしている(他校の男子にも狙われている)
まぁ、俺の幼なじみで仲良くしているから俺は男どもに嫌われているが。
バッと俺の口にサンドイッチを押し込む。
「一緒に食べようね」
甘え声で闇の笑いを浮かべた。悪女め!
★
「どうかしました?」
クララが横に立っていて一瞬愛かと思ったが愛は元気な姿、どちらも可愛いがクララは少し違ったクールな感じである。
はぐれペニョを見て自分の肉球をながめた。
人の時を思い出していた。
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