第12話こら、リザードマン
フィールドに緑色のユニフォームを着たチュナフキンズが五人ほど縦に整列して右手を胸に当てて勇ましい音楽とともに入場してきた。
緑色の帽子を被った猫族によってワァアっとそれこそ地響きのような歓声があがった。
「チュナフキンズ、チュナフキンズ」大声でみんなが叫ぶ。
俺もつい叫んでしまったのでチキのねこパンチが飛んできた。
頬に命中。
「アッホやなぁ、ここはチョウチャンズのサポーターの席やで」
俺は舌を可愛く少しペロッと出した。
うっかり、うっかり。
「なんや、かわいいやないか」
チキがもじもじしながら見つめてきた。
お次はチョウチャンズである。
赤いユニフォームを着たチョウチャンズが入場すると、耳の鼓膜が震えるような叫び声が轟く。
「いっよっしゃーーー! やったれ、チョウチャンズ!」
チキが興奮して前の席のドワーフを蹴った。
ギロリと睨みかえされたチキは俺のほうにまんまるお手てを突きつけたので、俺がドワーフに舌打ちされた。
審判らしき猫がササッと黒いマントをはおりねこねこ拡声器を取りだしカンペを読みながら言った。
「あー、うー、スポーツニャンシップにのっとって……」
たどたどしい審判の口上に嫌気がさしたのかまぁるいスタジアムはブーイングの嵐がふきあれた。
審判は鼻の横に皺を作ると、「はじめ!」っとホイッスルを高らかに鳴らす。
魚型のホイッスルなのでかわいいから欲しかった。
売ってないだろうなっと思っているとチキが「はじまるでー!」 っと俺の肩をぐらぐら揺らした。
試合が始まり、マタタビボールがあっち行ったりこっちいったりまさに戦場のような光景に俺はつい引き込まれてしまい、手のひらをぐっとにぎり、前のめりになっていた。
クララは相変わらず落ち着いて両手をひじに置いて冷静に様子をうかがっていた。
皆がヒートアップした頃に、水をさすような事が起こった。
人間より一回り大きいトカゲが鎧まとってフィールドに進入してきたのだ。
ざわめく人々、わめきちらす猫族。
「あれは、トカゲ型モンスター、リザードマンです」
クララは険しい顔で椅子から少し腰をあげて俺に耳打ちするとフィールドの方に顔をむけた。
「神聖なフィールドにトカゲが入ってくるにゃんて!」
チキはシャドウ猫パンチをしながら怒り狂っていた。
赤い帽子をぐるぐる回している。
チキが神聖なっと自分で言っときながらフィールドに飛び、着地した。
つられて俺もフィールドに飛び出した。
お次はクララがメイド服のヒラヒラをひるがえしながらフワリと着地した、美しい姿に観客達はオオーっと歓声をあげた。
リザードマンは俺達に気づくと長い舌をちろりと出すと少し困惑したようだった。
テヘペロしたつもりだが可愛くないぞ!
みんなの楽しみを奪うトカゲめ!
チキとクララが相手してくれるだろう!
お祈りしてな!
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