晴天

 春休み前の終業式の日。皐月と夜空、恵奈の三人は屋上入り口の踊り場で座って喋っていた。すでに三年生は卒業しているため、いつもより少ない人数での終業式はあっさりと終わり、ホームルームも通知表を受け取って終わった。

「二年生、終わっちゃったな」

「あっという間だったわね」

「楽しかったな――」

 三人はそれぞれ感想をつぶやく。三年次のクラス発表はまだ行われていないため、春休み後に三人がそれぞれどの教室に行くかはわからない。それでももう寂しさは薄れていた。

「ところで夜空さん」

「なにかしら恵奈さん」

「春休みも冬休みと同じことするんですかね」

「するわよ」

「そっか。……そっか」

 夜空と恵奈のやり取りに皐月は苦笑を漏らす。皐月は夏休みに体験済みだが、夜空の長期休みの前半はひたすら宿題である。そしてやっと終わったと思えば前期の復習と次期に向けての予習が始まるのだ。それを冬休みに体験した恵奈はやや疲れた顔をしている。

「でもほら、春休みは宿題がないから」

「ここできちんと勉強をしておくことが受験の役に立つのよ」

 皐月が一応の慰めの言葉を口にするが夜空に一蹴される。

「まあいいよ」

「恵奈?」

 なぜか嬉しそうにする恵奈に皐月が首を傾げる。

「だってそれって、春休みの間も会えるってことでしょ。だからそれはそれで楽しみ」

「そうね、私も楽しみだわ」

「そっか、そうだね。楽しみだ」

 冬も終わりが近づいていて、空が春に向けて明るくなっている。

 冷たかった風が徐々に穏やかになっていく。

 空気が変わり、気持ちも変わり、一緒に過ごす人が変わった。

 そうやって変わっていくこともいいものだと、皐月は窓の外の空を見上げた。

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はればれ 水谷なっぱ @nappa_fake

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