結論

 進路希望票が渡されてから数日後。皐月、夜空、恵奈の三人は教室の隅で近隣の高校一覧を開いていた。

「わたしはここにしようと思うんだ」

「あら、私の行きたい学校と近いのね」

「あたしはちょっと離れてるかな」

 三人はそれぞれ行きたい学校を指し示した。三人とも違う学校だが、それを悲しむ様子はない。

「まだなにがしたいかわからないから、まずは全体的な学力の底上げをしようと思う」

「皐月らしくていいと思うわ。私は……自分にできることを増やそうと思うの。徐々にでもね」

「それも夜空らしいよ」

「あたしは好きなことをする! 好きなことのためにできることを探すの」

「素敵ね。自分が好きなことを目指せるのはかっこいいわ」

「ほんとに!? やった――!」

 にこにこしながら両手を上げる恵奈に皐月と夜空も笑う。

 それぞれが全く違う内容を書いた進路希望票を持って、三人は職員室へと提出に行く。担任は内容を見て少し驚いたようだったが、一言だけコメントして受け取った。

「君たちは仲がいいから同じ学校を目指すものかと思ったが――自分のやりたいことをきちんと目指しているならいい」

 その言葉を聞いて皐月は(この人は案外まともな大人なのかもな)と思う。いつだったか、教師なんてろくな人種じゃないと決めつけていたこともあったけれど、それだけではないのかもしれない。

 職員室を出た三人は図書室に向かう。そして再びそれぞれの夢ややりたいこと、将来への希望を話し合った。

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