不安

「う~~ん」

 恵奈はスマートフォンをいじりながら床に転がっていた。制服はシワだらけになってしまったし、髪も崩れているがそれどころではないのだ。

 皐月は高校選びにすごく真剣に悩んでいた。夜空も真面目な顔で高校一覧をめくっていた。

 自分はどうだろう。ただ適当に制服のかわいい学校を眺めていただけだ。なんか悔しかった。

 恵奈から見ると、皐月と夜空はすごく落ち着いて見える。そういう風に自分もきちんとしたいのだ。今までみたいに派手な流行を追いかけているだけじゃなくて、自分の好きなものを好きだと言って、大事なものを大事にできるようになりたかった。

「あたしの好きなものってなんだろう?」

 皐月と夜空。あとかわいいものとおいしいもの。友達二人はさておき、かわいいものとおいしいものってなんだろう。ケーキ?

 そう考えて恵奈はスマートフォンをぽちぽちといじる。開いたページはフリーマーケット通販サイトだった。そこでは個人で手作りをしている人が作ったものを販売している。そういうものを見るのが恵奈は好きだ。

「でも、あたし自分で手作りはできないし」

 なら、そういうものを取り扱うような仕事はどうだろう。卸売? 商社? なんかそういうの。

 曖昧な知識を総動員して恵奈は考える。そういうキャリアウーマンみたいなことを自分はできるだろうか。夜空ならきっとかっこよくこなすんだろう。皐月もちゃんとできるに違いない。なら自分は。

 そう簡単にはいかないだろうなと思う。二人のようにきちんとしていないのだと自分でもわかっている。

 しかしだからといってそう簡単に諦めていいのだろうか。なんといっても恵奈はまだ中学二年生で、まだまだこれからいろいろなことをできるようになるはずなのだ。

 さすがに子供のようになんでもできるとは思わない。けどなんにもできないとも思わない。

 だから自分にできることをもっと増やすんだ。そのためになにをしたらいいのか考えよう。いつか大人になったときに、皐月と夜空に胸を張って会えるように。

 恵奈は飛び起きて拳を握りしめた。

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