解散
長かったようで短かった修学旅行を終えて、三人は学校の最寄り駅まで戻ってきた。
少し離れただけの街並みは懐かしいようで今まで通りで変わらない。それをあらためて実感した。
他のクラスメイトはもう帰途についている。皐月と夜空、恵奈の三人は駅の近くのコンビニ前でしゃべっていた。
「同じ班に入れてくれてありがとう」
「いいよ。人数足りなかったし」
「そうね。私達だけでは班を組めなかったもの」
恵奈はわずかに下を向く。
「あと、許してくれてありがとう」
「?」
「いいのよ。お互いさまだもの」
なんのことだか首をかしげる皐月を置いて、夜空は柔らかく微笑む。なんとなく察した皐月だが、余計なことは言わないことにした。それに夜空がこんなに穏やかに微笑むようになったことが皐月には嬉しい。
「なんにせよ楽しかったねえ」
「色々あったけど結果オーライね。お互いに買ったアクセサリー、大事にするわ」
「うん! 飾っておく!」
「つけなよ」
旅先で得た思い出もお土産も体験も、全てが大切で大事で輝いている。こういうのが青春って言うんだろうなと皐月はくすぐったいような気持ちになる。
夜空と、そして恵奈と友達になって良かったと思った。もし明日以降、恵奈と話すことがなくなったとしても、それを許容できるくらいには皐月は成長したのだ。
子供の成長って早いんだなと他人事のように皐月は思う。こうやって大人になって、そうやってなにかを手に入れて、それでも最後に失わずにいられるものがあるならそれでいい。
どこか達観したような顔をする皐月を横目で見て、夜空もくすりと笑った。
それでいいのだ。本当に色々あったのだけれど、最後に良しと笑えるならそれでいい。
同じように微笑む皐月と夜空を前にして恵奈は顔を上げた。
もうきっといいだろう。
自分は決めたんだ。明日どうするかを。どのように二人に話すのかを。きっと夜空も皐月も背中を押してくれる。だから大丈夫。
「それじゃ」
「うん」
「また明日。学校で」
「ええ」
三人は手を振って別れた。
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