旅行
「本当にきたのね」
「嘘つかないけど」
「そういう意味じゃないと思うな」
昼休みになると恵奈はまっすぐ皐月と夜空のもとにやってきた。そして夜空の嫌みを物ともせず二人の間に座る。
「まあまあ、いいじゃん。それよりお願いがあるんだけど」
「えーー」
「嫌」
「話し聞くくらいしてよ!」
恵奈はびっくりしたような顔をしつつもお弁当を開けながら話を始めた。
「あのさ、このあとホームルームでしょ。そこで修学旅行の班決めするらしいんだよね。だからあたしと一緒の班になってほしいわけ」
「えーー」
「嫌」
「ちょっと! 班は三人以上で一班だから! どっちにしたって夜空と皐月だけじゃ駄目だから!」
断られたことが意外なのか恵奈はまくし立てる。皐月は夜空に、夜空は皐月に「どうしよう?」という顔を向ける。
先に口を開いたのは夜空だった。
「あなたはあなたのお友達と組めばいいじゃない」
「ウチラのグループ人数が微妙で一人余っちゃうんだよ。だから誰か他のグループも入れないとなの。あ、恵奈でいいから」
「だったら調整して誰か二人と私達でいいじゃない」
「そうもいかないの! 察してよ!」
「そういう面倒そうなことは察しないことにしてるから」
あからさまに嫌そうにする夜空に変わって皐月が答える。すると恵奈は動揺し始めた。やっぱり面倒なことが待ち受けてるんだなーーと皐月は他人事のように思う。
「ぐう、仕方ないな。あ、あんまり大きい声で言わないでね。……ウチラのグループね、内部分裂しそうなの」
「あらそう」
「ちょっと夜空、なにその満面の笑み! 原因あんたなんだからね! その、一学期にいじめっぽいこと……つーかいじめ、あったじゃん。それに対する賛成派と反対派で対立しちゃって」
「あらあら」
「だから笑顔! 反対してたの、あたし、だけで。だから今ちょっとハブられてて」
「ふうん。まあそういうことなら」
皐月はなんとも言えない気持ちになりつつも夜空の方を見る。夜空は「好きにしていいわ」と頭を振った。そうであれば皐月が反対する理由はなにもない。
「いいの!?」
「いいよ」
「よかったーー。このままハブられて修学旅行ぼっちとか死ぬかもって……」
「大げさね」
「ガチだし!!」
恵奈は一瞬膨れつつも笑ってみせた。多少無理をしているのかもしれなくても、ずっと泣きそうな顔をされているよりはいい。皐月と夜空は困ったようなほっとしたような顔を見合わせた。
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