潜思

 夜空が図書室から去ったあと、わたしも帰宅した。こういう時は自宅マンションがやけに大きくそびえたつようで圧を感じる。それを無視して中に入り、自分の部屋のベッドに寝転がった。

 なんで、なんで、なんで。

 なんで夜空はあんな不快そうな顔をしたのか。

 わたしのなにがいけなかったのか。

 夜空は『なぜ友人と縁を切ったのか』『なぜ夜空と一緒にいるのか』を聞いてきた。なんで友人と縁を切ったのかなんて簡単だ。夜空と一緒にいることを友人が拒んだからだ。

 じゃあなんで友人と縁を切ってまでまで夜空と一緒にいることにしたのだろう。

 それは。

 なんでだろう?

 最初はただの興味本位だったけど、徐々に一人でいる夜空を放っておけなくなったんだ。一人で無表情で過ごす夜空を見たくなかったんだ。

 なんでかってそれは。

 そうか。

 きっと夜空のことが好きになったんだろうな。

 夜空と友達になりたいって思ったんだ。

 わたしは夜空と友人を天秤にかけて夜空を選んだんだ。

 最低。

 誰かと誰かを比べられるほど、わたしはできた人間ではないというのに。

 本当に最低だね。

 でも最低だとわかったところで、今更どちらとも仲良くするだなんてできない。夜空か友人かをわたしは決めなくてはいけない。あの二人の態度を見たら、両方を選べないことくらいわたしにだってわかっていた。

 だから今は、より好きな夜空を選ぼう。今まで意識していなかったけど、夜空と友達になろうとした時点で、それを友人が拒んだ時点で、わたしの気持ちは友人からは離れている。

 でもじゃあなぜ夜空を好きになって友達になろうと思ったのか。

 最初はただの興味本位だった。

 それが夜空のかわいいところとか、優しいところとか、言いたいことをちゃんと言えるかっこよさを好きになった。

 だから友達になりたいと思ったんだ。

 夜空が怒ったのはわたしが「楽」と言ったからだ。わたしが「楽だから友人よりも夜空の方を選んだ。楽な方に流れた」ように見えたんだ。そりゃあ夜空も怒るよね。そうじゃないことをきちんと言わなくては。わかってもらえるかはわからなくとも、わたしは自分で見つけた答えを夜空に伝える必要がある。だって夜空は連絡をちょうだいと言ってくれたじゃないか。

 ここまできて、またもや夜空の優しさに甘えてしまっているのはかっこ悪いけれど、ここで逃げちゃダメなんだ。

 なんて、もとより夜空から逃げる気なんてない。

 夜空はわたしの大事な友達なんだから。

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