謝罪

 そうしてわたしが心を決めたと同時に、玄関のチャイムが鳴らされた。インターホン越しに出てみると元友人だった。なんていうか間が悪い。今は夜空と話したいのに。

 「皐月、今ちょっと話せる?」

 「あーー、うん。出るからそこで待ってて」

 しかし追い返すほど強くない。とはいえ家にあげるほどお人好しでもない。ということでマンションのエントランスまで降りることにした。

 「ごめんね急に」

 「いいよ、どうしたの?」

 「あの、さっきは夜空さんがいたから言えなかったんだけど」

 夜空がいたら言えないような話はわたしにもしないでいただきたい。そう言うわけにもいかず、曖昧な笑みでお茶を濁す。

 わたし、強かになったようなあ。

 「皐月が良かったら、友達に戻らない?」

 「え?」

 「だってそうでしょ。夜空さんは好きで一人でいるんだし、そのせいで皐月がいじめられたんじゃない。でももうそれもなくなった。無理に皐月が夜空さんにかまってあげる必要なんてないんだよ。だから元通りわたしたちと過ごそうよ。もしまた夜空さんのせいで皐月になにかあったら嫌だよ」

 それは。

 それはどういう。

 やばいやばい。

 わたしちょっと怒ってる。

 「悪いけどそれは止めとく」

 精一杯、怒りを抑えてそう言った。元友人は心底不思議そうな顔でぽかんとする。

 でも一瞬で般若のような顔になった。

 「はあ!? なんで!? わたしよりあの子を選ぶわけ?意味わかんない。あんなクラス中から無視されるような子だよ? 絶対碌なことにならないよ。わたしは皐月のためを思って言ってるのにそれがわからないの?」

 「なにがわたしのためになるかは、わたしが決めることだよ。わたしは夜空が好きだもの。そのせいでなにかあってもかまわない。

 だいたいあなたは夜空のなにを知っているの?なんにも知らないのに勝手なこと言わないで」

 ちょっと感情的になってしまった。感じ悪かったかもしれないけど我慢できなかったんだ。だって大事な友達のことを上辺だけで判断されて貶されたら腹が立つ。

 わたしが一歩も引かない姿勢で元友人を見返すと、その子は真っ赤になって、下をむいた。

 「なにそれ」

 「ごめんだけど、わたしは夜空の友達だから」

 「……意味わかんない!!」

 そう怒鳴って、元友人はエントランスから出て行ってしまった。

 はーー、怖かった。

 ひっぱたかれるかと思った。

 なにより疲れた。

 まあいいや。これでちゃんと決別できたんだ。新学期が怖いけど、それは追々夜空と相談して考えよう。今は家に帰って夜空に連絡しなくては。

 そこでカツンと音がして顔を上げたけど誰もいなかった。

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