老後のこと皆んな不安じゃないの?
勇者という「職業」を御存知だろうか。
無論、この街の平和を脅かす魔王を討伐するのが勇者の使命。
しかしながら勇者を支える収入源は国税であり、民の血なのだ。
現在魔王討伐の方法として有力とされているのが、それぞれの勇者が一斉に魔王に飛びかかり仕留める、多勢に無勢の戦法だ。
そして本題となるのは魔王討伐後の報酬をどのようにして分けるかになる。
国が定めつつある方針では、それぞれのヒットポイントによって報酬が付与されるというもの。
ヒットポイントを緻密に把握する専門の国定魔術師の需要が非常に高くなっているほどだ。
しかし、魔王を倒すことによって得られる賃金はどの程度なのか、そして魔王は勇者が束になって襲いかかれば倒せるものなのか、誰にも分からない。
計画を興し帰って来ない勇者たちが居ることから、未だに勇者の力というのはたかが知れているのかもしれない。
さて、魔王討伐まで、勇者はモンスター、街を脅かす野盗、魔王軍の手下等を倒し、いわゆる歩合制に近い条件で政府より報酬額が通達されている。
それ以外にも、ある程度は勇者に一定の支援金が支払われる。
周知の事実だろうが、国税で賄われる一定の勇者への支援金は年々減少傾向に有り、それに関連した様々な問題が増えてきている。
勇者登録を済んでいるにも関わらず、自宅に常に居るという、いわゆる「ペーパーブレイバー」。
魔王を討伐するという動き自体がむしろ民を苦しめるのではないか?という思想の下に集った宗教法人「ライジング・サン」
通常であればモンスターを倒すことで勇者は生計を立てている。しかし、お金は必要だが、命の駆け引きのリスクは大きい。
そのためか、いわゆる勇者のアイドル化現象が発生している。
ある一定の支援者によって成り立つ勇者団体も結成された。
40人以上の勇者が一匹のモンスターを倒すという、何とも、モンスターに同情すら覚えてしまう。
このように、「勇者」という職業は多様化しつつあり、それに伴い様々な問題も浮き彫りになっている。
現に、魔王軍を倒さずとも国家として維持し続けている強固な国もあるのだから、本当に「勇者」は必要なのか問われる時代になっているのかもしれない。
他の勇者たちと共闘して魔王を討っても報酬は微々たるものだろう。
そこで溢れた勇者たちの末路は国から与えられる重労働。
ここ最近は老後のことばかりが気がかりで、剣を持つ手も震える。
他の勇者の皆んなはそのへん(将来)のことちゃんと考えているのだろうか。
モンスターからの攻撃をかわしつつ、思う。
すっごい気になるんだけれど、なかなか聞けない。
勇気を出しておそるおそる聞いても「そのお家柄で将来のご心配をなさるなんて、なんて堅実な方なんだ」とはぐらされる。
魔王討伐後の勇者の将来について、皆んな思考停止というか、暗黙の了解でしゃべらないことになっているのか、そんな雰囲気だ。
不安でしょうがない。もうやっっぱり絶対重労働だよこれ・・・。
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