勇者ですが老後が心配です。魔王を倒した後は居酒屋をチェーン展開しようと思います。

筆まめ猫ろんだ

すみません、エッチなこと考えてました。

「・・・ここが、ベネル山脈か。」

魔王軍幹部であるベネルの門番を倒し、 消耗しきった身体を無理矢理引きずった。

他の仲間もディアで回復しつつ、それでも回復が追いつかず、言葉すらも出ない様子だ。壮大なベネル山脈へ挑むのには、これではマズい。


「今夜はここで寝よう。」

日も暗くなりつつあるから-と言い始めると横からレニアが訪ねてきた。

「ドレルトフェアー(魔装備選択)がはじまっているわ。」

ドレルトフェアーとは、魔王軍の支配下にある者を倒したときに女神アルテアから勇者に支給される能力だ。


「ペネルの門番だから、リーフェントエクスリプス、ライアールスペンド、ロイスターテーリングのいずれかね。」

レニアの超回復は凄まじい。

さっきまでの疲労した表情は嘘かのように、小躍りしながら問いかける。

そのシャープで綺麗な顔とはミスマッチの胸を揺らしながら。


(いけない、邪心があっては光が入ってこない)

無理矢理、自分が今持っている剣のささくれのような部分に注視した。

(すごいささくれだ、戦闘中に指に刺さったら地味に痛いやつだ・・・。)


すると、淡く、少し緑系の光が胸の奥へゆったりと入ってくる。

「・・・勇者よ・・・選択の時・・・選ぶのだ・・・」

美しい光が、身体に響くように問いかける。

周りの仲間に気付かれないよう伝える。

(・・少し待って欲しい・・・)


「レニア、一先ず他の仲間たちへのディアが先だ。こんな絶好のチャンスで、野盗が目を離すはずもないだろう」

はぐらかすときは、もっともらしいことをいかに説得力を持たせてい言うかが重要だ。

「わかったわ、他の仲間にも声を掛ける。」


大きく上下に弾む胸に目がいってしまう。

スルスルと身体から抜けていく光。

(しまった!・・ササクレのことだけを考えるんだ・・・ササクレ・・・ササクレすげえ、ササクレ、剣のササクレ・・・)

「ササクレえええ!!!」

仲間たちが一斉にこちらを振り返った。


「・・・【ササザークレー】、新しい剣術を考案して、つい気合がな。」

仲間たちがどよめく。

「さすが名門リストレア家のご子孫。門番を倒し憔悴しきった私達とは違うわ。こんな状態でも更に高みを目指す鍛錬を忘れないなんて・・・」


(すみません、エッチなこと考えてただけです・・・本当すみません・・・)

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