第7話
日曜日のスーパーは、なかなかに賑わっていたので、男性もけっこうな人数がいた。
普段なら、
やっとのことで買い物を終えてスーパーを出た
左腕が痛む、というのもあるが、目の前に関わらないと決めた同級生がいたからだ。
「あら。奇遇ねえ。お買い物?」
アタシはお散歩なんだけど、と裏声で言う彼(彼女)は、ふわりと微笑んだ。
彼(彼女)――
さらに言えば、彼が普段から、今現在も着けているアクセサリーも、高校生の持ち物としては高価なものである。
アクセサリーについて、
高価な服であれば、
その彼らがアクセサリーを好まないので、
そして、
「こ、こんにちは……桜井君……」
「はあい、こんにちは。」
笑顔の
今朝、父から暴力を受けたばかりで、今はどんな男性に会っても体が言うことをきかなくなる。
スーパー内での買い物ですら苦労したというのに、男子と話すのはつらいものがあるのだ。
それでも、声を掛けられたのに無視するわけにもいかず、
「えっと……その、さようなら。」
会釈したまま顔は上げず、さっさと立ち去ろうとしたら、方向転換したところで誰かにぶつかってしまう。
「どこ見て歩いてんだ!」
どうやら、男性にぶつかってしまったらしい。
そして、その男性はなかなか沸点の低い人物だったらしい。
それは、スイッチみたいなものだ。
こういう場合は再度謝るべきだとは思うが、声が上手く出なくなる。逃げ出したいのに、足が動かない。
急に左腕の痛みが増した気がして、力が入らなくなり、
体が動かないので、それを拾うことすらままならない。
「おい、謝ったらどうだ?」
男性がさらに声を荒げる。周囲の人間は、何事かと足を止め、
そのとき、
「ちょっと、この子はちゃんと謝りましたよ。いい大人が女の子相手に恥ずかしくないんですか?」
そのため、
彼(彼女)の言葉で周りの視線に気付いた男性は、罰が悪そうにその場を去っていく。
高校生に咎められてすぐ去るほどのことなら、そんなに怒る必要はなかっただろうに、と
男性の背中が見えなくなるのを見届けたあと、
それを見て、周囲の人々はまるで何事もなかったかのように元の行動に戻っていく。
「中身は大丈夫みたいね。あなたは大丈夫?ひどい男よねえ、ちょっとぶつかったくらいであんなに怒鳴らなくてもいいじゃない。はい、これ……」
少し震えているではないか。
いくら男が苦手だからといって、2回ほど怒鳴られたくらいで、こんなに怯えることがあるとは思えない。
「大丈夫?ねえ……」
そこで、彼女の名前を呼ぼうとして、
彼女の顔はひきつっていたが、それでも目は
「ねえ、あなたのお名前は?」
「え……?」
予想外だったのだろう。
しばらくにこにこと微笑んでいる
「梅林……
「みおちゃんね!知ってるみたいだけどアタシは桜井
「え、えと……え?」
きょとんとしたかと思えば、目を泳がせる
彼女の体は動くようになったらしい。
「はい、これ。どうぞ。」
「ありがとう……」
その袖からのぞいた赤い肌に、
「どうしたの、これ!火傷じゃない!病院は?行ったの?」
2、3回しか話したことがないのに、ものすごく心配されてしまい、
そして、先ほどから驚きや困惑続きだったせいだろうか、口を滑らせる。
「これは、お父さんが怒って……」
「え?」
驚いた表情の
家庭の事情を
「お父さんが珍しく怒っててね!びっくりしたら持ってたお味噌汁がかかっちゃって!今日は病院開いてないから、明日でいいかなって!」
男子相手に、はっきりと大きな声が出たことに、
女子相手だって、沙紀以外とは、まともに会話することすらないのに。
「うち病院だから、いらっしゃい。医者は父だけど、母も姉も看護師だから、多分怖くないわよ。」
そう言ってまた微笑んだ
――男子なのに。こんなに怖い見た目なのに。
そのまま歩いていってしまう
そのときの
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