第6話
掃除を終えた
先ほど、弁当を引っ提げて帰ってきていたから、まだ父親のところだろうか。
兄もあまり父親と長い間話すことはない。
以前も、聖斗が部屋にいなかったから他の用事を先にしてしまったことがある。その際は、次の日学校に行けない程度に顔を殴られた。しかも、当初の目的も同時進行された。
それから、待つ以外の選択肢がなくなった。
買い物に行かなければならないのに、こんなことに時間と体力を奪われるのが嫌でしょうがない。それでも後々のことを考えると逆らうわけにもいかず、
数分後、部屋に入ってきたのは聖斗ではなく英斗の方だった。
英斗が聖斗の行為を知っているかは
英斗がこのことを知らなければ、
「知ってるよ。動画見せてもらったから。」
寒気と吐き気が
今、目の前男は「動画を見た」と言った。いつの間に動画を撮られていたのだろう。しかもそれを自分の弟に見せるなど、上の兄は頭がおかしいのだろうか。
少しも動かないまま、顔だけを青ざめさせる
「別に僕は
下の兄も充分頭がおかしかった。
英斗はいつもこうなのだ。
英斗にとって、
母の代わりに家事をこなすことを許されるなんて、愛されてる。
殴る側の拳だって痛いのに、痣ができるまで殴って怒ってもらえて、愛されてる。
実兄から、恋人や夫婦の間で交わす行為を求められて、愛されてる。
そういう考え方の持ち主なのだ。
これが嫌味ではなく、心底思っているのだから、おかしいとしか言いようがない。
英斗は怒鳴ることや嫌味を言うことはよくあっても、殴ったりすることは少ない。その点に関しては父親や聖斗よりかましだ。
それでも、考え方は異常であり、本人はこれでも
愛だと称して、父親や聖斗が
「でさ、
「え……あ、はい……」
英斗は用件を伝えるとさっさと出て行ってしまった。
聖斗に用事ができたので、呼び出しは午後に延期。
それは全くありがたくない連絡だった。午後の方が捕らわれる時間が長いではないか。
つまり、炊事と洗濯の時間さえ確保できれば、その他の時間は聖斗のおもちゃになるのだ。
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