第4話
自分の態度のせいで、そんなつもりはなくとも彼(彼女)に悲しい顔をさせてしまったこともあり、これ以上は関わらないと心に決め、
――放課後
いつものように、
この時間だけは、誰も気にすることなく過ごせるので、
この時間がなければ、今の生活に耐えられなくなりそうなくらいに、大切な時間である。
他愛もない話をしていると、不意に沙紀が立ち止まる。
「今日、
そう言って、沙紀は自分の目線より下にある
きっと、音楽の授業の時のことを言っているのだろう。
確かに、
それが、男子が苦手な
その労いの手に他意は無い。友達として、労っているだけ。それは
それでも、
顔に熱が集まるのを感じて、それを悟られないよう、
「ありがとう、沙紀ちゃん……」
安定した調子の
心臓の高鳴りも、もう収まっていた。
これが、沙紀にも言えない、
こればっかりは、
これはきっと、彼女が産まれたときから決まっていたのだ。なぜなら、親兄弟に苦手意識を持ち、男がダメになる前からこうなのだから。
これは、誰にも言えない。
最近は世間的にもこういうことに理解のある人が増えている。それでも、偏見や好奇の目にさらされる可能性は充分あるし、厳格な父にでも知られたらただごとではないだろう。
だから、誰にも言えない。言ってはいけない。
――沙紀ちゃんのことも、好きなのは友達としてだから、きっと大丈夫。
そう自分に言い聞かせて、
男性に対する恐怖といい、自分の秘密といい、
たまに考え込むと、何もできなくなるけれど、彼女はそれでも生きていくしかない世界に産まれてしまったのだ。
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