第3話
桜井
「あら、この間の……」
隣のクラスである以上、選択授業が
男子に苦手意識がありすぎたせいで、周りを見ようとしていなかったのだ。
「そういえば、音楽で一緒って言うの忘れてたわ。」
沙紀は、あまり反省した様子もなく言った。彼女に悪気が無いことがわかっているので、
しかし、関わらないようにするって決めたばかりなのにどうしてこうなってしまったんだろう、と
先ほど、バッチリ目が合ってしまった手前、スルーするわけにもいかず、
この前ぶつかってしまったことも、まともに謝ったとは言い難いので、改めて謝るべきだろうか。
もんもんと悩んでいると、
こうなると、もう
助けを求めて沙紀の袖を掴みたいのに、それすらできない。
それを察してか、沙紀は
「何かご用?」
「いえ、用ってほどじゃないんだけどね。この間のことを謝りたくて……」
この笑みで今まで一体何人が泣かされただろう。
それに臆さず話しかけてくる
そして、
この間のことを謝りたいというのはどういうことだろう、桜井くんは何も悪くないのに、と。
少しきょとんとしてしまった
「アタシこんなだから、気持ち悪かったでしょ?今も気持ち悪いかもしれないけど……だから、ごめんなさいね。」
出会ったときと同じ、悲しそうな笑顔。
もしそうならば、ぶつかってしまったことよりも、謝るべきはこちらだ。
いつの間にか痛みが引き、体が動くようになった
「ち、違うの……桜井くんが気持ち悪いとかじゃなくて……わ、私、男の子が怖くて……だから、桜井くんは悪くなくて……その、えっと……私こそごめん、なさい……」
最終的に自分でも何が言いたいかよくわからなくなってきたが、謝るという目的は達成された。
本当は怖い噂もある人だから、男の子というより、
「そうだったのね。ありがとう。」
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