第3話 僕は何故か別荘で暮らす事になりました。

祖父と会ってから僕は一日泊る事にした。というか、させられた。

「真様、ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした」

そう言って出て来たのは紺さんだった。紺さんはやはり、大人な感じで狐子とはまた違った雰囲気の女性だ。そして僕が心を許している人の一人でもある。

「いいよ、私用で来れなかったんだし。それに、僕も成長したみたいで暴走したお爺ちゃんを止める事が出来たしね」

そう言うと紺さんは驚いてから笑顔になった。昔は祖父を叱るなんて絶対にできなかった。

「成長したのですね、真様。そう言えば、私の娘もいると聞いたのですが」

「あ、はい。狐子」

そう言うと狐子は僕の後ろから出て来た。そしてすぐに紺に抱きついた。

「お母様!!私、狐子って名前になったんです!!」

「そう、狐子。いい名前ですね。狐の子と書いて狐子ですか。真様らしいいい名前ですね」

それは僕が単純な名前しかつけられないという紺さんの嫌味だろうか。と考えてしまうくらいは僕は余裕なんだなと痛感するのだった。

「真様。昼食の準備ができましたのでどうぞこちらへ」

「あ、うん」

僕と狐子は一緒に食堂に行った。狐子は紺さんと仲良く話をしていたやっぱり親子なんだなと僕は少し疎外感を感じてしまった。

僕は少し嫌な感じがした。何か一大イベントが待っているようなそんな感じだ。

紺さんが扉を開けると、そこには人がたくさんいた。その中には父さんと母さんもいた。僕が見たことない人ばかりだ。でも、使用人の格好ではない。じゃあ、誰?

「おお、真。こっちじゃ」

「お爺ちゃん、一体これは?」

祖父はしてやったりと言った顔で僕を見た。

「これは、会合じゃ。芦架は元々安倍家の人間ではないからのぅ。じゃから、芦屋家と一緒に会合をする事になったのじゃ」

僕が見回していると、その場にいた全員が僕を見ていた。人見知りが軽くなったとはいえ、流石に怖い。そこには詠歌さんも座っていた。

「ほう、こいつがお前の孫か。何やら怯えているみたいだが?」

「そりゃお主が怖い目で見つめているからじゃろ。真や、こっちにおいで」

僕は祖父に呼ばれたので歩いて行った。

「ここに座るのじゃ」

「嫌だ。ていうか、僕はもうそんな事卒業したから」

僕はすぐに否定した。祖父はやっぱり苦手だ。

「あーあ、振られちゃったね。お爺ちゃん」

そう言って出て来たのは女の子だった。見たことない人また登場!

「おお、林檎。よう来たのぅ」

そう言って差し出したのは祖父の隣だった。

「嫌だよ。そこに座ったら撫でまわされるもん。それよりも、真君の隣の方がいいな」

その女の子は僕をしたから上まで全部見ていた。

「へー、結構可愛らしい顔してるね。女の子みたいじゃん」

「林檎、無礼はよしなさい」

「はーい」

そう言って席に座った。僕も、空気を読んで空いている席に座った。

「……では、これから会合を始めます。議題は安倍真をどっちの姓にするかです」

「ぐふっ!!」

僕は飲んでいたお茶を吐いてしまった。

「な、何ですか!それ!!」

「正式に言えば、どっちの家の跡取りになるかじゃの。詠歌と林檎はお前の許嫁じゃ」

「え!?」

「そう言う事」

そう言って詠歌さんは僕の肩を持った。

「だから、まあよろしくね。真君」

そう言っておでこを当てて来た。それを見ていた林檎さんも僕の腕にくっ付いてきた。

「私も構ってほしーなー」

「え、えっと。取り敢えず2人とも離れてくれますか?その後だったら話を聞くので」

そう言うと2人は離れた。そして僕は透かさず、狐子を抱きしめた。

「え!?真様!?」

「ちょっと我慢してて」

2人はやられたという顔をしていた。そして、会合はどんどん進んで行き結局僕はまだ学生と言う事で見通しになった。


「あの、真様。いつまでこんな格好を?」

「ん?あ、もうちょっとだけね」

狐子の毛ってすごいふわふわなんだな。とても落ち着く。護身用で抱いてたけど結構癖になる。

「狐子の毛超気持ちいい。寝ちゃいそう」

「そ、そうですか?」

「うん」

しばらくして僕は狐子から離れた。狐子は何かがっかりしたような顔をしていたが、僕はあまり気にしなかった。

「さてと、僕はお爺ちゃんに呼ばれてるから行くよ。狐子は紺さんと一緒に話して来れば?」

「はい!!」

そう返事をすると、狐子は耳が動き、尻尾が左右に揺れた。

正直、僕は祖父や母さん達と話すのは嫌いに近い。面倒だし、何より話が逸れるのだ。もう父さんだって興味なさそうにお茶を飲んでるし。

「真です」

「おお、入りなさい」

僕が入ると、珍しく静かだった。

「呼んだのは、お前がわしの家の別荘で暮らす事じゃ。一応、そこからの方が学校から近いでの」

「お爺様!なんでそうなるんですか!?私達の家から通えばいいじゃないですか!!」

「それじゃ、芦架が甘やかすだろ?」

口を挟んだのは父さんだった。これは、祖父と父さんが考えたみたいだ。

「……分かったわ」

母さんは父さんには逆らえない。いつもそうだ。その理由はいつも母さんを野放しにしているのだから、重大な場合は逆らえないのだ。

それで僕は何度か助けて貰ったし。

「と言う訳で、真。用意をせい」

「分かったよ」

僕達は家に帰って身支度をする事になった。話しを聞く限り、僕一人で自立して住む事になっている。

ていうか、祖父の家みたいに無駄に大きいのは困るんだけどな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る