第4話 姉さんが登場しました。

僕は先に別荘に向かっていた。

中学の時の友達にも協力してもらって、引っ越しを手伝ってもらう事になったのだ。

だが、僕は祖父からある一点の事を確認を忘れていた。

「……さて、着いたか」

「遅かったね、真君」

嫌な予感がして後ろを向くと、そこには詠歌さんと林檎さんが立っていた。

「な、何で2人が!?」

「あれ、源蔵さんから聞いてないの?」

源蔵とは、僕の祖父の事だ。

「私達3人で同居する事になったの!だから、よろしくね。真君」

「え、えぇぇぇぇぇ!?」


僕はスマホを取り出して祖父に電話をかけた。

「おお、真。どうした?」

「お爺ちゃん!何で詠歌さんと林檎さんと一緒に住む事になってんの!?」

「はて、言って無かったかの?3人で同居するって」

「言ってないよ!!」

「……そう耳元で大きな声を出すなて。わしだって反対したんじゃぞ。でもの、芦屋の奴が無理矢理決めたのじゃ。だから、今回はわしのせいではない!!」

「でも!」

「悪いが、わしも仕事がある。じゃ、切るのー」

そう言うと祖父は電話を切った。

僕、これから大丈夫だろうか?あんなキャラが濃い人達と一緒に暮らすなんて。

「じゃあ、真君の部屋はここね。んで、右側が林檎で左側は私」

「は、はあ」

何か勝手に仕切ってるし。まあ、それはそれでいいんだけどね。

「私達の荷物は前に運び終わってるから」

「あ、はい。言っておきますけど、僕の部屋の整理は不要ですから」

僕が冷たく言うと、詠歌さんはニヤッとして腕にひっ付いた。

「えー?手伝いたいなー。真君の私物見てみたーい!」

「駄目です!それに、女の子の詠歌さんと男の僕で一緒にいたら駄目でしょう!?林檎さんからも何か言って下さい!!」

「そうだね。女の子と2人っきりなのはよろしくないね」

よかった、林檎さんはまともみたいだ。

「じゃあ、私も一緒にいれば問題ないよね?」

まともじゃなかったー!!

「いや、尚の事駄目でしょう!?」


結局僕は2人を外に出し、すぐに部屋の片づけを始めた。

「まったく」

「真様。私も何か手伝いましょうか?」

「あ、うん。お願いするよ」

そう言うと、狐子は段ボール箱を開けた。

「真様、これはどこに置けばよいですか?」

そう言って出したのは僕のパンツ基、下着だった。

「そ、それは僕がしまうよ。て言うか、その段ボール箱は僕がやるから!こっちの整理お願い!!」

「?分かりました」

やっぱり色々と教えておいた方がよさそうだな。一応、知っておくべきの事だし。って、話してる僕が恥ずかしくなりそうだ。

色々と考えていると、狐子が本を落としてしまった。

「す、すいません。今すぐ拾いま……」

その本は僕が小さい頃の写真だった。

「あー、これは幼稚園児の頃の写真だね。休憩がてら見るか」

「はい!」

僕は狐子を胡坐の上に乗せてページをめくって行った。

「わ、これ、僕が初めておつかいをして帰って来た時の写真だ。こっちは運動会の宣誓をした時の。こっちはお遊戯会でシンデレラをした時のだね」

お遊戯会で僕がした役は王子様だった。あの時は緊張しすぎて何も喋れなかったけど、母さんと父さんのおかげで出来るようになったんだっけ?

「真様って絶対に周りに人がいますね。さぞや人気者だったんでしょう?」

「うーん、どうなのかな?よく分からないよ。昔の事だし」

確かに僕は色んな人と面識があった。その理由はよく覚えてないけど。

「これ、お爺ちゃんと一緒に神社に行った時のだ。あの時は僕がとても泣いてお爺ちゃんを困らせたんだっけ」

「色々な思い出を見て来たのですね」

そう言うと、狐子は遠い目をした。

狐子には幼少期に過ごした記憶はない。普通妖狐などの式は幼少期から主と共にいる物だが、僕の覚醒が遅かった為狐子は目覚めなかったのだ。

僕は狐子を抱いた。

「真様!?」

「これからいっぱい思い出を作って行こう。僕と狐子は一心同体。一生は慣れる事は出来ないんだから」

「……はい、真様」


僕らは整理が終わり、夕食の準備ができたと言うのでリビングに降りた。

「じゃ、いただきます」

「召し上がれ」

ご飯を食べると、とても美味しかった。

「美味しい!これ、詠歌さんが作ったんですか!?」

「うん、気に入ってくれて何より」

僕はどんどんご飯を食べて行った。

「……ご馳走様でした!」

「御粗末さまでした」

そう言うと林檎さんがお皿を持って台所に行った。

「な、何するの?」

「え?いや、ご飯作ってもらっちゃったから私がお皿を洗ってあげようかなと思って」

な、何かトゲのある言い方だな。

「あら、そう?じゃあ、私達は部屋で遊びましょうか」

「ちょっ!!」

林檎さんは何か慌てたような顔になって僕達を止めた。

「ん?どうしたの、林檎」

「どうしたのじゃない!何で部屋で二人っきりなの!?」

「えー?だって、仕事するんでしょ?その間暇だから真君と一緒に遊ぼうと思ったのよ」

「駄目!一人だけ抜け駆けなんて!!」

2人は喧嘩を始めてしまったので、僕は家を出て出かける事にした。

「疲れた」

「大丈夫ですか、真様。あの女達め。真様が余計疲れているのが分からないのか?」

「まあまあ。あれはあれで落ち着くから。あ、狐子。人間の姿に化けられる?」

「え、はい。出来ますが。どうしたのですか?」

「まあ、ここは路上だからね。狐の姿をした女の子が歩いてたら目立つんだよ。だから、化けて欲しいんだ」

狐子は頭を傾げながら僕の言うとおりにした。一応僕の注文は女の子に化けて欲しいという事だ。

「……これでよろしいでしょうか?」

「うん。あと、狐子は僕の妹って設定だから敬語はなし」

「わ、分かった」

「うん!じゃ、行こうか」

僕らは手を繋いでショッピングモールに向かった。人がたくさんいて疲れそうだ。

「狐子。僕の手を離しちゃ駄目だよ」

「う、うん」

狐子は僕の手をしっかり持って歩いて行った。それにしても狐子の手って柔らかいな。女の子って感じだ。

「あ、そう言えば狐子は下着とか持ってるのか?」

「え、持ってないよ。だって、私の姿は袴だから」

あ、そっか。下着を着る必要はないのか。でも、流石に来ておいた方がいいだろう。

「狐子。下着を買いに行くよ。持ってた方がいいからね。あと、普通の服」

僕達はモールで大きな子供服を売っている所に向かった。

「狐子の気に入った物を持ってくればいいから」

「え!?そんな、ご主人様に買ってもらうのは!!」

「狐子!?」

そう僕が言うと我に返ったようで下着を選び始めた。


「5点で4280円になります」

結構安いんだな。子供服って。

僕はお金をぴったりだした。

「お買い上げありがとうございました」

「さて、狐子。次はどこに行こうか?」

「え!?えっと……」

そう考えてると、狐子の腹がギュルルルとなった。

「お昼いこっか」

「……はい」

狐子も可愛いとこがあるな。と思う僕であった。

僕らが行ったのはファーストフード店だった。

「いただきます」

「い、いただきます」

狐子はファーストフード店に初めて来た為うろたえている。この姿を見ているのは結構楽しい。妹が出来たみたいだ。

「真、お兄ちゃん。どうしたの?」

「え?ああ、なんか本当に妹が出来たみたいだなと思って」

僕の家や関係的にお姉さん的な存在しかいなかったのだ。そして、僕がいくつになっても逆らえない人が一人いる。

「よう、真。楽しそうじゃないか」

僕は恐る恐る後ろを見た。すると、そこには僕が一番逆らえない人間がいた。

「ね、姉さん!!」

「久しぶりだな」

そう。僕の目の前には姉である安倍清夏あべきよかが立っていたのである。

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