2章 式神編

第1話 2体目の式神と契約しました。

僕が退魔部に入り、1週間が過ぎた。

僕的には体力の限界だったんだが、狐子がアフターケアまでしてくれた為今日まで持ったのだ。

そして今日は初めての戦闘日。一応、何度か出撃はあったが僕は初心者だった為戦闘には入れずじまいだった。

「よっす、真」

「あ、晴鬨。おはよう」

「お前、結構逞しくなったんじゃないか?」

「うん、結構筋肉も増えて来たんだよね」

「そうだよな。1週間前はもっとヒョロヒョロしてたもんな」

正直、あんまり実感はわかない。重い物を軽々と持ち上げるくらいで、特に変わった感じではないのだ。

「お前、女子達に狙われてるぞ。結構人気だからな、お前」

「え、そうなの?」

「ああ。つーかお前今まで気付いてなかったのか?」

「うん」

僕は当たり前の様な感じで返事をした。

「……そりゃ、狙われるわな」

「え?」

「何でもない。さて、教室に行くぞ」

そう言って晴鬨は僕の肩を持ち、歩いて行った。

僕はその時の晴鬨の態度がよく分からなかった。だが、すぐに分かる事になる。

授業が終わって、僕は教室を出た。

「真君」

「何?」

「その、これ」

渡してきたのは、小さな箱だった。

「良かったら食べて」

「うん、ありがとう」

僕は箱を手に持って、歩いてった。

「あらら。やっぱり天然のイケメン君だな」

僕は部室に集合するよう秀歌さんに言われていたので向かった。

「お、やっと来たね」

もう全員集合で僕が一番最後らしい。

「遅れました」

「じゃあ、真君も来た事だし会議を始めますか」

退魔部は元々陰陽学園の中でトップが集まっている。だから、穢れが出た場合授業は免除で浄化活動に専念するようにと定められているのだ。

「今日、今から浄化要請が来ているから行くよ。真君、準備はいい?」

「は、はい」

「うん。今日は結構強いから用心して」

僕はその顔を見て唾を呑んだ。でも、それは恐怖と何か予感があったからだった。

「さて、じゃあこれから行くよ」

そう言うと、僕らは一瞬で不界に到着した。

「さてと、じゃあこれを投げて」

そう言って渡したのは札だった。僕は言われた通りに札を投げた。すると、何か陣が僕を通して消えた。

自分の体を見ると、服が変わっていた。

「これは!?」

「それは言わば戦闘服ね。それを着れば力が200%を出せるの」

結構かっこいいかもなんて思ったのは僕だけの秘め事。

「さ、来たよ」

僕は気合を入れて前を見た。そこには何か黒い物体とその周りに黴菌みたいな物がウヨウヨしていた。

「あれが、穢れ」

「そう。正確に言えば穢人えじん。ビビっちゃった?」

「いえ、そう言う訳ではないんです。逆にワクワクしているんですけど、何かあまり穢れな感じはしないんです」

僕は何か変な気分になっていた。

「……真様。あれは人間の出した物ではありません」

「やっぱり。あれは?」

「あやつは茨木童子です。闇落ちしてしまったのでしょう」

「そう。救う事は出来るの?」

狐子はとても迷った風に顔を伏せた。

「あるんだね」

「……はい。ですが、この行為は真様がとても危ないんです」

「それでもいいよ。僕は」

「ですが!」

僕は狐子の頭を撫でた。

「大丈夫。僕は安倍清明の子孫であり、葵ちゃんの指導に生き残った人間。そう簡単に死ぬわけない。それに、狐子を路頭に迷わせる事はしないから」

「分かりました。あやつは自我を無くしてしまっています。ですから、真様の手でその穢れを無くし式神にすればよいのです」

「そう、分かった。じゃあ、それをやろう」

「待って下さい。これはとても危険な物なんですよ!?」

「分かってるよ。狐子が顔を伏せるくらいなんだし。でも、あの子を助けたいんだ」

僕はちゃんと狐子の目を見て言った。

「……分かりました。でも、無理はしないで下さい」

「分かってるよ」

僕は前に立って呪を唱えた。

「ノウマクサラバタタギャテイヤクサラバ、ボケイビャクサラバタタラセンダ、マカロシャケンギャキサラバビキナンウンタラタ、カンマン」

「凄い量の霊力が真君から出てきてる」

「これは、危ない状態ですわ」

そう言ったのは万理だった。

「え?」

「安倍君の今の状態は霊力が外に流れ出てる状態なのです。ですから、霊力が尽き倒れてしまいますわ」

「でも、成功すれば快挙だよ。葵はどっち派なのかな?」

「そんなの決まってます。真は絶対に成功しますよ。昔からあの子は負けず嫌いだったのですから」

僕は何だか自分が何処かに飛んでしまいそうだった。

「真様、もう少しの辛抱です」

「分かってる」

「あがぁぁぁぁぁ!!」

そう言って穢れを纏った茨木童子は倒れた。

「真様、やりました!!」

「そう、だ、ね」

「真様!!」

僕は疲れ切ってそのまま倒れてしまった。


僕が目を覚ますと保健室のベッドに横になっていた。

「……またここか」

狐子は僕の手を握って寝ていた。

「狐子ちゃん、ずっと真君の手を握って寝ていたんだよ。そりゃあもう野生の獣みたいで大変だったんだから」

「そうだったんですか」

正直、その時の記憶は少しある。意識が朦朧としていたからはっきりとは覚えてないけど。何度も名前を呼ばれた記憶はある。

「あ、そう言えばあの時倒したのはどこにいるんですか?」

「ん?それなら、君の横にいるよ」

僕は言われた通り、横を見た。すると、仁王立ちして僕を睨みつけている茨木童子がいた。

「あ、大丈夫だった?」

「……大丈夫だ。お前こそ、無理していたじゃないか」

「ああ、それは大丈夫。もう治ったよ」

そう言うと、狐子は目を覚ました。

「真様!ご無事ですか!?」

「あ、うん。大丈夫だよ、完全回復だね」

「良かったです!茨木童子、お主礼は言ったのか?」

「今言おうと思ってたんだ。その、助けたことは感謝する」

「何だ、その言い方は!!」

狐子は大層ご立腹で茨木童子に飛び掛かろうとしていた。

「まあまあ。あのさ、これから君はどうするの?」

「は?何言ってんだ、お前」

「えっと、予定では君を僕の式神にするってなってたんだけど、でも本人の意見も聞いておこうかなって思って」

茨木童子はとても驚いた顔で僕を見ていた。

「……こんな人間初めて見たな。俺はお前の式神になるよ。助けて貰った恩返しって事でな」

「そっか。じゃあ、式神の契約儀式をしないとね」

僕達は保健室から部室に戻った。


「あ、真大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。ほら、この通り!」

葵ちゃんの前で屈伸や背伸びや肩回しをしていた。

「よかったよー。万理も結構心配してたしね」

「し、心配なんてしてませんわ」

「もー、照れちゃって!!」

「あの、この子と契約をしたいんですけど」

僕は茨木童子を前に出した。すると、皆は驚いていた。

「茨木童子って結構レアだよね。それを式神なんて」

「……不愉快ですわ」

僕は契約の陣の上で術を唱えた。

「我は式神と契約を望む者なり。我第一式、狐子の体を媒介としそこにいる茨木童子を我の手中に入らせたまえ。名は緒月おづき

そう言うと僕は光に包まれた。そして、首元に印が出て来た。

「これは」

「その印は契約が完了した印です。この印に亀裂が出来ると、式神は命を落とします。私の印も真様の体に付いているのです」

そう言って狐子は僕の手を取った。そこには茨木童子とはまた違う印が付いていた。

「じゃあ、式神って自分の分身って事?」

「はい」

僕はやっと理解できた。式神は自分の分身であり、主が死ねば式神も死ぬという残酷な物だという事。

「あのさ、俺が契約して分かったんだけどお前の中に十二神将が眠ってるぞ。それに、あと8体式神と契約できる」

その言葉を聞いて全員が僕を見ていた。僕は何が何だか分からず慌てていた。

「やっぱり真君って安倍清明の子孫なんだね」

「ええ、そうですわね」

「うん」

「な、何ですかー!?」

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