スケルトンの少女さんと人探し
その天敵は……犬
「はいよ、お待ち!」
「ありがとうございます」
昼の商店街。ボクは魚人族の魚屋の店主さんから商品を受け取る。
「そういや、お客さん、聞きました?」
「え、何か面白い話でもあるんですか?」
「ええ、最近、共同墓地の方で幽霊が出るらしいんですよ」
店主さんは苦々しい顔をしながら言う。
「幽霊……ですか?」
「ええ、やつらはどうも好きになれないんですよねぇ。いや、同じ魔族の仲間だとは思ってるんですけど」
「そうですか……」
メガネを直しながらボクはつぶやく。
「やっぱり、死んでいると気になりますか?」
「そうですねぇ。なんとなく気味は悪いし、なにがあるかわかりませんからね」
「すいませーん。これください」
「はいよ!」
他のお客さんに呼ばれて店主が目の前から消える。
ボクは店を離れると石畳の路地を家に向かって歩く。
「ああ、そうだ、せっかくだからあの人の好きなものも買っていってあげようかな?」
立ち止まって、別の店に行こうとしたその瞬間
「いや! やめてください!」
不意に路地裏の方から女性の声が聞こえる。周りを見ると他の人は気付いていないらしい。
「いや、そんな、やめてください!」
一瞬だけ迷ったけど、女性が危険な目にあっているのにそのまま見逃すなんてできるわけがない。ボクは路地に入り、女性の声がする方へと走る。
「はぁ、はぁ……いやぁ、だめぇ……そんなこと舐めないでぇ……」
声はどんどん近くなっていく。これはかなり危ない状況かもしれない。ボクは狭い路地をひたすら進む。
さらに声は近くなっていく。もう目の前だ!
「何をしてるん……え?」
ボクが角を曲がるとそこには……
「ひや、やめ、そんなとこ舐めな、いや、噛まないでください!」
ゆったりとしたフード付きのローブを着た人間の骨が転がっている。そして、その骨を何匹かの犬がローブに顔を突っ込んだりして舐めたり噛んだりしている。
「た、助けてください!」
そして、その骨からかわいらしい少女の声がする。どうやら、魔族であるスケルトンらしい。
「あー……じゃあ、ちょっと待っててください」
ボクは買い物袋からハムを取り出す。魔法を使おうかとも思ったけど、さすがに街中でやるのはやりすぎだ。
「ほーれほれほれ、そんな骨よりも、おいしいものがあるよ~」
「そんな骨って何なんですか!」
スケルトン少女が文句を言ってくる。うん、意外に余裕があるね?
「そーら……ゴー!」
ボクはハムを力いっぱい放り投げる。野良犬たちはそのハムに向かって入り去っていった。
「はぁ……はぁ……た、助かった……」
スケルトン少女は立ち上がると服を直す。そしてボクの方を見る。
「助かりました。ありがとうございます」
「いえいえ、助かってよかったです」
お互いに挨拶をする。
「えーと……とりあえず、移動しませんか?」
「はい? どうしてですか?」
「あれが……」
ボクは指をさす。先ほどの野良犬がこっちを見てる。うん、凄い見てる。
いきなり襲ってくることはなさそうだが、すぐに立ち去った方がいいと思う。
「ひぇ! は、はやくいきましょう!」
彼女は怯えながら後ずさる。ボクたちは、野良犬を刺激しないようにゆっくりとその場を離れる。
そして、ボクたちは裏路地を通って移動する。
「ちょっと遠いんですけど、ボクの家でいいですか?」
「え? あなたの家ですか?」
ボクが聞くと彼女は戸惑う。
「いや、さすがにその姿だと街の人が……」
魔王として不死族も部下として雇用しているから気にはならない。だけど、街にいるとなるとなると、周りが大変なことになってしまう。
「そう……ですね。でも、男の人の家に上がるというのは……」
「え?」
思わず変な声を出してしまう。
ああ、そうか、スケルトンだけど女の子だから当然、男性の家に上がるとか抵抗あるよね。
「あ! それは大丈夫。うちには女の人も住んでますから」
「女の人……ですか?」
「ええ、その……こ、恋人なんですけど……」
ボクはたどたどしく言ってしまう。いまだに女勇者さんを恋人と呼ぶのは慣れない。
「そうですか……わかりました。よろしくお願いします」
彼女は少し迷ったようだったけど、ボクの提案に賛成してくれた。
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