WMA資金防衛編

第112話 緒川二郎内閣総理大臣。

 それからIWCから天皇を守る戦いが終わり、俺達はようやく平穏を取り戻せた。

 比較的、傷が浅かった俺とカミラは緒川二郎先生と共に皇室で会食し、今やこれからの状況を話す事にした。


「シュタイン君。君が僕達を助けてくれたお陰で凄く助かった。君に監査する。」


「あぁ。でも、俺だけが英雄じゃない。マリーナ、カミラ、そしてゲオルグが居たから、渡部真三政権を倒し、天皇陛下の意向を聞いてくれる緒川二郎先生が政権取れる準備が出来たんだ。俺だけでは決して出来なかった事に感謝したい。」


「そうか。シュタイン君。君は渡部真三やIWCから国を守ってくれた偉大なる人間だし、それだけの実力や情報戦が長けていた。それは十分に評価されると思うぞ。」


「ありがとう。緒川先生。でも、貴様が政権を取っても決して安泰じゃない事は分かっている。世界の情勢を見ると、2つの国に分かれる。『不安定な主権』か、『奴隷の平和』かの2択しかないのが基本だからアメリカが狙ってくると思うと決して油断は出来ないからな。」


「シュタイン君。君の言葉は流石だ。君の言う通り、国や世の中は2つしかなりたたない。奴隷の安定か、主権たる不安定の2択しかない。そういう世界情勢を教えてくれた君には僕も良く理解できる。それを心掛けていかないと又、奴隷の安定に戻るからな。」


「あぁ、その言葉を忘れないでほしい。ロシアのチェノフスキー大統領も主権ある不安定路線を貫いてきた。徳田とくだ幕府は奴隷の平和路線で臆病だから今の英米に追従するしかなかった。対して、織田信長おだ のぶながは主権たる不安定を良く知っていたからこそ、当時は先進的なものを作ったのだろう。それが伝統になる様に…。」


「それが後に伝統になるのは有名な話だな。」


「先進的な価値観は必ずしや伝統的になる事を俺はしっている。同時に非先進的な価値観は因習になるから、それを心がければ常に新しく斬新的な価値観を入れる事で伝統が維持されるのは当然だ。」


「あぁ、その通りだ。シュタイン君。」


 俺は伝統を得るには先進的な価値観が必要なのが分かっていた。

 当時、先進的な価値観が後に伝統として残る事を俺は知っている。

 一方、非先進的なものは因習になるからそれは変えるべきなのが保守の神髄だ。

 良いものは先進的=伝統になり、悪いものは非先進的=因習になる事は主権たる不安定を作る国なら当たり前の事。


 男色は因習、男女平等や実力主義は伝統と解釈できるのはその為だ。

 男色はパワハラを生み、男尊女子を生み出す。

 故に因習であり、男女平等とは程遠い価値観なのだ。

 だから俺は、皆にそういう矜持を持って欲しかった。


「でも、シュタイン。アンタが居たからこそ私は助かったけどね。」


「あぁ。でも、カミラ。貴様が居たからこそ俺は助かった。」


「ふふっ。でも、それはシュタイン君やカミラちゃんだけじゃないよ。僕や天皇陛下がいたからこそ助かった。同時に僕や天皇陛下も君達が居たから無事に政権樹立する事が出来たんだ。だから、この中で誰1人欠けていたり、死んでいたら今がないと僕は思っているよ。」


「そうだな。緒川先生。」


「さすがですなぁ。シュタイン君。緒川二郎君。そしてカミラ君。君達が居たから渡部真三という逆賊を倒せたんだ。君達はこの行いを十分に誇りだと思って良いな。」


「うん。その通りだ。渡部真三はアメリカの傀儡でIWCの手先だから。倒して当然。」


「全く。その通りだ。こうして、皆で助かったお陰でこれから僕と天皇陛下が平和な日本を作るから安心しろな。」


「あぁ、俺がロシアに帰ったらその事を典紀さんに報告するから安心しろ。」


「当然だな。君なら、この事件の内容を典紀さんに話しても良さそうだな。口が軽そうで堅い男だ。」


「御意。それは褒め言葉として処理させていただきます。」


 こうして、俺達は皇居で無事に会食を終えた後、マリーナ達を緒川二郎邸に戻して、明日の準備をした。

************

 それから翌日…、


「シュタイン君。君は皇居へ…、カミラ君はここで2人の様子を確認してくれ。」


「了解。俺は緒川二郎先生の総理大臣就任式を行うから、カミラは待っててほしい。」


「うん。分かったよ。シュタイン君。」


「あぁ。」


 俺と緒川二郎先生は皇居と国会議事堂へ向かった。

 そして、俺は皇居で降りて、天皇陛下を守る準備をしながら、緒川二郎先生の総理大臣就任式を見届ける事にした。

 それから緒川二郎先生は総理大臣として正式に就任し、就任式は無事に終えた。


*******

「で、シュタイン君。君に任せて欲しい任務があるけど大丈夫かい?」


「陛下殿。確か世界平和の為に任務だろ。」


「あぁ。君にはWMAの資金の一部をチェノフスキー大統領に渡してほしいけど、大丈夫か。」


「当然です。」


 俺は、WMAの任務を聞いてようやく次の任務が来るとはっきりした。


 この資金は絶対にIWCの魔の手から守らねば。

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