第85話 ユンケラ首相は何処?

 建物内でAIが暴れているなら俺はペントバルビダールを塗り込んだ矢が飛んでくると分かった以上、下手にドアを部屋に開けてはならないと痛感した。


「ゲオルグ。確かにペントバルビダールという薬が塗り込まれた矢が飛んでくる事はそれだけ安全性を高い事に変わりないよな。」


「あぁ、あくまで権力者側からすれば非常に安全な罠だろう。しかし、俺たちからすれば非常に危険な罠だと思うがない。」


 つまり、安全と危険の場合、どちらの側が安全か危険なのかをきちんと定義する必要があると俺は思う。

 だからこそ、俺達からすれば危険だが、ユンケラ首相からすれば非常に安全な場所といえる。

 故にユンケラ首相側は安全だと思い込んでいる。

 つまり、侵入出来たら彼女は直ぐに追い込まれると俺は思うのだ。


「だから、ゲオルグ。ユンケラ首相が追い込むには相手を油断させるような思考をさせながら本物の扉を開けた時に奇襲させれば良いだけだ。」


「よし、シュタインは良い事を言ったね。間違いなく彼女は非常に油断している。既に彼女は難民問題でドイツ国民から既に避難ごうごうとなっている。だからこういった企業城下町に逃げ込むしかないんだよ。」


 つまり、こういった指導者の多くは企業城下町に逃げ込むことで自分達の身をまもることが一目瞭然だから…。


「で、ゲオルグ。ユンケラ首相は何処にいると思うんだ。」


「僕は、恐らく、ここにはいないと思う。けど、ここにはユンケラ首相がいる部屋のエレベーターがあるとあるのは確かだ。」


「そうか。つまり、ユンケラ首相がいる部屋の階に行ける訳だな。」


「そうだ。シュタイン。」


 俺はこの部屋にユンケラ首相がいなくてもこれだけ厳重なエレベータで彼女がいる部屋にいるのは間違いなかった。

 だとすれば…、


「シュタイン。ユンケラ首相がいる部屋は間違いなくエレベーターで最上階の1回下にいる。」


「つまり、彼女はそこにいる訳だな。」


「そうだ。そしてエレベーターには毒ガスを仕込んでいる可能性が十分にある。だとすれば、僕はエレベータの中にあるガスを破壊すれば良いだけだと思う。それで良いか?」


「あぁ、良いとも。」


 確かにエレベーターは密室になる他、その時間が長くなるので毒ガスを仕込むのは至極当然だと感じた。

 そしてエレベーターだけでなくビルの階段でも毒ガスが仕込まれている可能性が非常に高い。

 つまり、何方を使っても毒ガスに巻き込まれるならエレベーターを利用しして、途中の階で降り得れば良いだけだと俺は感じた。


「よし、近くには特別なエレベーターがある。それに乗ろうな。」


「シュタイン。それで良い。入ったら僕はエレベータのプログラム改造をする。」


「了解。」


 俺はそのエレベーターに彼女のいる部屋に通じる階段があり、それを上手く使えば良いだけだと感じた。

********

 そしてエレベーターに乗った俺とゲオルグは毒矢の罠を回避してこれからユンケラ首相の部屋がいる最上階の1階手前まで上る事にした。

 すると…、


「ゲオルグ。何かへんな臭いがしないか?」


「あぁ、する。だが、これは毒ガスの匂いじゃないぞ。」


 俺はこの臭いは毒ガスの匂いじゃなければ1つだけ考えられる。

 それは火を起こす事だと俺は感じ取れた…。

 火災なら十分にあり得そうだな。

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