第78話 亡命した首相?

 ゲオルグがベルリン地下鉄での安全文字セキュリティコードを無事に解除したお陰でこれからドイツ首相官邸府に突入可能になった俺たちはこれからドイツ官邸府に突入する決意をした。


「気を付けろ。シュタイン。」


「あぁ、ドイツ首相官邸府は何が仕掛けられているのか分からないからな。」


 ドイツ首相官邸府には何が仕掛けられているのか考えながらこれから俺はここへ突入した。

*********

「ゲオルグ。ここはドイツ首相官邸か。」


「あぁ、安全文字セキュリティコードは、解除してある。更に言えばキリル文字で解読できるようにしてあるから安易に変えられない。」


 確かにキリル文字で文字入力してそれを軌道文字の中心にすれば問題ないな。

 そうする事で安易に戻される心配もないし、相手も消せば効果が消せると思わないからな。


「シュタイン。どうやら、官邸府には誰もいないようだな。」


「そう、見たいだな。」


 俺はドイツ首相官邸が簡単に侵入出来た事はまだよかったが、それにしても妙に誰もいない事に俺は不気味さを感じた。


「でも、おかしくないか?」


「あぁ、普段ならこの官邸府にはユンケラ首相がいるのにここには誰もいない。と言いたいだろ。」


「その通りだ。あまりに人気のなさに妙に違う空気を吸っているような気がする。」


 官邸府に入ってから誰一人も邸内にいない事に妙におかしい。

 普通なら誰か1人いてもおかしくないと感じたが、入ってから誰もこの官邸府にはいなかった。


「シュタイン。どうやら、警備が解除された事、ベルリン中央駅で人身事故が起きた事からそちらに行っている可能性が高いと俺は思った。」


 つまり、ここにいない事はベルリン中央駅から鉄道や道路を使って逃げた可能性もありそうな感じがした。


「それで、ドイツは日本やフランス、ロシア、英国みたいに中央集権ちゅおうしゅうけん型でなく、都市間分散としぶんさんがた型国家だから他の都市にも官邸がありそうな気もするんだよね。」


「まぁ、連中はそういう風にする事で安全な場所にいつでも逃げられる構図になっている事は俺も知ってるがな。」


「シュタイン。流石だ。連中は恐らくベルリン中央駅で不自然な人身事故が起きたからここから離れようとしたわけだな。」


 そうだ。

 連中はベルリン中央駅で不自然な人身事故が起きたからベルリンから離れ、違う都市に移動している可能性が高い。

 つまり、裏を返せばベルリンに勝る都市が幾らでもあることがそれだけで解ってくる。

 他にある都市は恐らく、ケルン、フランクフルト、シュトガルト、そしてドイツ一の企業城下町であるバイエルンの4つの都市に逃げている可能性が高いと俺は解った。

 IWC時代に一部政治家はワシントンD.Cだけでなくデラウェア州、ペンタゴン、ハリウッド、シリコンバレー等に逃げた経緯があるから裏を返せば企業城下町といわれる場所に連中が集まりやすい風土が存在するだろう。

 つまり、ベルリン以外の4つの都市にユンケラ首相が亡命している可能性が高い。

 だとすれば、ここにいると何かやられる恐れが高いと俺は感じた。


「つまり、連中は鉄道を利用して他の都市に逃げた事は間違いない。なら、俺が奴らを制裁して見せるぞ。」


「そうだな。シュタイン。他の都市にユンケラ首相が逃げたなら十分に可能性がある。」


 俺とゲオルグは不気味すぎるこの場所から去る事にした。


 だが、この不気味な屋敷から出ようとしていた俺達はまさか追ってきているとはこの時は思いもしなかった。

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