第55話 ПТОП на Барьбы ловить США. (アメリカが仕掛ける戦争を止めよう。)

 僕たちは結局、ジョンソンがいない状態でモスクワに帰還するしかなかった。

 ジョンソンは確かに、ドロテアと戦闘した。

 しかし、彼がいなくなった現場では死体すら残らなかった事が分かり、あいつが何処に行ったのかよくわからないままだった。



 ―――俺は、我が妹がどれだけ危険な奴なのかよく理解している。


 だから、俺は典紀さんとマリーナに重要な話をしていた。


「そしてあいつの前で『お兄ちゃん』と叫ぶと能力が発動し、身体を奪われる危険性が高い。」


「成程。つまり、奴は身体を入れ替える能力を持ち、尚且つ発動条件が『お兄ちゃん』と叫ぶことで兄妹の入れ替えの能力を発動できる訳か…。」


「はぁ、奴は何て恐ろしい能力を持っているんだ。それもスパイに適任した能力とは怖いな~。」


「うん、だからドロテアは俺と違いIWCに残った訳だし、俺はIWC時代には能力者にはならなかった。それ故…、俺は…、裏切り者といわれてもショウガいないかもしれない…。」


 俺はIWC時代に能力者にならなかった影響で俺は裏切り者扱いされる事は分かっていた。

 だけどな…、だけどな…、

 そうしないとアメリカにとって都合の悪い情報をロシアとかに漏らせば俺はあの破滅の刻で殺されかねない状況まで陥っているんだ。

 無論、俺も『カラプソフ・ミーラ』で能力者になっている以上、破滅の刻はいつ動くか解らない。

 だから、俺はロシア政府に逆らう事が出来ないのは至極当然だ。

 俺が刑務所からマリーナと共に逃げだしたときは逃げたい気持ちが優先して契約してしまったが、それでよかったかもしれない。

 俺達は、能力者になった以上、その国の諜報機関の駒として動かねばならぬから…。

 勿論、俺達は人間ではなく、ただの諜報機関の奴隷の駒として動くだけだ…。

 だから、俺は結局、IWCからは完全に裏切り者として扱われる中でもアメリカ発のイラク戦争を止めねばならなかった。


「そして、貴様たちに最後の忠告をしたい。もし、身体を奪われても冷静な判断を失うな。」


「あぁ、冷静な判断を失えば、私たちが逆にやられるだけだな。」


「ふふっ。流石はシュタイン。俺が見越した男だ。俺も冷静な判断をしなければ能力が発動できない。当然、シュタインもマリーナも俺達が殺しや情報漏洩の報いがいつ来るか分かっている目をしている。」


「典紀さん。俺もその覚悟があるからここにいるんだ。」


「当然だ。私もアメリカ発のイラク戦争を止める為に、悪魔に身体を売ったんだ。だから、気にするなよ…。」


「あぁ…。」


 俺達は和気藹々とどんな報いが来ようが、俺達はアメリカが仕掛ける戦争を止めたいと思った。


「それでさ…、」


 とその時…、


「ただいま…。」


「おぉ、ゲオルグ、カミラ…。ってジョンソンは何処へ行った…。」

 俺は2人が帰りながらもジョンソンがいない事に薄々気づいた。

 普通の任務なら彼が却って来てもおかしくないはずだが、どうして彼が帰ってこないのか不可解だったからだ。


「典紀さん。シュタイン君。僕はジョンソンがあいつに殺されたと実感したんだ。」


「あいつって、まさかっ。俺の妹なのか…。」


「そうだよ。シュタイン君。」


 俺の妹があいつを殺したと聞いた時、あいつが救いようないところまで来ていると俺は感じた。

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