第54話 ジョンソンがいなくても任務は成功した…?

「どうやら、あの女は去ったようだな。僕がやれるのはこれだけだが、とりあえずアビーム大統領を守りきれただけ、上手くいったといっても良いだろう。」


 僕は暗号と電子構文を変えただけで相手が読みにくい安全文字が発揮できた。


 ―――ジョンソンさん。僕は貴方がいなくても出来たんですよ。


 ジョンソンが何処にいるのか分からないながらも、僕はこれから元の世界に戻ろうとした。



「お帰り、ゲオルグ。」


「カミラ。君が無事で何よりだよ。俺は君がいて安心した。」


 とりあえずカミラが無事で何よりだ。

 問題は、ジョンソンだが彼が何処にいるのか分からなかった。

 だが、カミラが無事で俺は泣きそうな状態でも彼女が安心して何よりだった。

 あの女はとにかくヤバい。

 シュタインの妹であるが、IWCに対する忠誠心と敵に対して要さない姿勢。

 どう見てもシュタイン君より有能な奴な妹だ。

 だから、『9・11』テロを暴露して投獄されたシュタインを彼女は平気で見捨てる事が出来たんだ。

 政治家・諜報員・経営者に必要なのは非情さであるが、同時に危機回避経営を上手くやり過ごせるのかも重要になる。

 彼がロシアに逃げてこれたのは凄く良かったと思うし、そのお陰でIWCやアメリカの同盟国の諜報員の魔の手から逃れられたことは非常に大きいと思った。

 だが、僕が出来る事はやらないといけないと思い…。


「で、アビーム大統領殿。イラン・イラク戦争でアメリカが関与した資料や記録は残っていないか?」


「君は確かロシアの…。」


「『カラプソフミーラ』の一員だ。西側諸国亡命組が多くを占めるロシアの特殊舞台だ。」


「解った。アンタラがアメリカの事を調べたいなら私は一部資料を提供する。それでよいか?」


「当然。僕もアメリカが関与した全ての資料など、求めてなどない。だから重要な関与が強い部分を出した資料を提供するだけでよろしい。」


「…。分かった…。」


 アビーム大統領はやはり資料の話になってくると態度が違って来た。

 当然だ。敵国に重要な資料を公開する事など、普通はあり得ないからな。

 だが、アメリカと敵対してやらなければあいつらはイラク戦争を遂行する恐れが十二分にある。

 だから公開するだけで良かった。



「よし、これで重要な資料は全て揃った。」


「ありがとう。アビーム大統領。」


 僕はアビーム大統領から、重要な資料が提供された事で全部は持ち帰り不可だとしてもカミラと2分して3分の2くらいの資料は持って帰って良いと思った。


「よし、カミラ。」


「はい…。ゲオルグ殿。」


「これから俺と君の資料を二分して分けて持って帰るぞ。」


「了解。」


 僕は、これで大事な資料を2つに分けて特に重要な資料を3分の2、持って帰る事でイラン・イラク戦争やイラク戦争計画にアメリカがどれだけ関与しているか見つける事が出来るだろう。

 それ故に…、


「アビーム大統領。ジョンソンはどこにいるか分からないが、それでも僕たちはこの資料の多くをロシアに持って帰ります。」


「当然だ。俺はこの国を壊されるのは嫌だからな…。」


 アビーム大統領は自分の国が壊されるのが非常に恐れるのは当然として僕たちも特に重要な資料を集めて典紀さん達に報告しないとならないな…。

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