第49話 アメリカに担がれた指導者。

―――俺は今、イラクの大統領官邸にいる。何故ならこの国の大統領であるアル・アビーム大統領が俺達に言いたい事があるからだと述べていたからだ。


「アビーム大統領。これから俺達に対して言いたい事は何かあるんか?」


 俺は彼が俺達に話しておきたい話がどんな内容なのか非常に気にかかっていた。


「ジョンソン。君達にはIWCの実態について伝えておきたい事がある。」


「アンタが俺達に伝えておきたい事は何だ。」


 俺は、アビーム大統領がIWCの話をする事でIWCがどんな組織なのか非常に気にかかっていた。

 それ故に俺は彼の話を黙って聞く以外に手段がなかった。


「実は私はIWCによってえらばれた大統領なんだ…。」


「IWCによってアンタが雇われたのは確かだが、それでもアメリカに反発出来たことは凄く嬉しい事ではないか?」


「ありがとう。ジョンソン。でも、私はそれでイランと戦争を仕掛けて多くの犠牲者を出してしまった。私は戦争に反対してもアメリカ政府や英国、フランスなどの同盟国がそれを後押ししてイランに大量の戦火をもたらしてしまった。」


「イラン・イラク戦争。英米仏の軍需産業が私を脅迫して逆らえば私は殺される運命にあったんだよ。」


「英米仏の軍需産業。俺はそいつらが人の私的空間の侵害まで行う犯罪者だと思っている。あいつらの犯罪行為を見逃す事が出来ず、俺は『GAYSBOOK』の実態をばらしたからな。」


 俺は英米仏の軍需産業やIT産業が非常に許せなかった。

 何故なら、人の人権やプライバシーを踏みにじり、世界に情報を漏らそうとしているから余計に嫌いだった。

 嫌いだったからこそ、盗聴実態を英国中に暴露した。


 だが、俺はその内部告発でMA7にバレて逮捕されてしまった。


 当然、その様な状況下では、俺に対しては基本的人権が存在せず、拷問や苦しみを凄く味わう以外に逃げ場所など存在しなかった。

 勿論、罪状に至っては死刑になる事を免れなかった。

 だから、俺はこの腐りきった英国を脱出して英米仏の実態を漏らす行動に取り掛からなければ確実に俺の命は存在しないとさえ、感じてしまった。


「アビーム大統領。アンタがIWCに雇われても今はアメリカから敵視されている。敵視されているからこそ、アメリカや英仏と闘う気持ちを忘れるな。それを忘れたら奴らに呑み込まれるからな。」


「ありがとう。ジョンソン。私はイラクを良くしていきたい。でも、イラクには民主主義が生まれる土壌が存在しないんだよ。」


「中東で民主主義が無理な理由は部族争いが絶えず、それらをまとめる際、独裁者が必要になるからだろ。そして、その線引きは英米仏が勝手に決めた代物だろ。」


「その通りだ。やはり貴様はチェノフスキー大統領やロシアから認められた『カラプソフミーラ』の一員であるな。私はチェノフスキー大統領とクレムリンで会い、話をし、アメリカの脅威からこの国を守ろうと決意した。」


「そうか。ありがとうな。アビーム大統領。でも、俺はこれから確実にあの女を殺さねばならぬ。それは理解できるよな。」


「当然だ。あの女は確実に殺人鬼だとわかる。人の身体を奪い、相手を追い詰めるやり方を異様に好む。だから、私を仕留める為なら何やっても良い姿勢で行くだろう。」


「成程、なら俺はここであいつを仕留めて見せる。」


 俺は、あいつがこの国に滞在しているなら、今の内に彼女を殺そうと決意した。

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