第38話 兄弟の相違。

 俺は、マリーナの弟の話を聞いた後、研究所から突如、兄が現れた事で鳥肌がたった。


「兄さん。まさか難民ゾンビを作ったのは貴様なのか?」


 俺の兄がもし、難民ゾンビを製造した犯人なら俺の身内は全て敵になる。

 故に、俺はこの敵になった身内より、マリーナや典紀さんみたいな『カラプソフミーラ』の面々と一緒にいるしかないと思った。


「シュタイン。お前の言う通り、難民ゾンビは俺が製造したのは確かだ。当然、お前はエンデル家の汚点だから処罰する。」


 俺が汚点だと…。

 なんてことを言うんだ。兄さん…。

 否、こういう人間は最早俺の兄ではないから最早、抹殺するしかない…。

 俺はそう思いながらこれから掛け声で能力を発動しようと思った。


「なら兄さんよ。 Ни у Агафона естьニ ウ アガフォナ エスチ братяブラーチヤ. (間抜けな兄さんなど要らない。)」


 俺はこの掛け声で俺自身の能力を発動し、これからこの研究所も破壊しようと思った。


「待て。この研究所を壊したらどうなるか分かっているよな。」


「まっ、エンデル・ガウク。シュタインの兄はここでやられるだろうな。」


「これで終わりだ。兄さん。」


 俺は空気で兄さんを圧殺すれば、この研究所を壊せると思い、本気で兄さんを攻撃した。


「マリーナ姉ちゃん。クレメンテさん。僕と一緒にここから逃げよう。」


「エレック。ありがとう。」


 マリーナとクレメンテさんがマリーナの弟と共に避難した事で一気に俺の兄さんを本気で殺せると思った。

 すると、兄さんが…、


「シュタイン。俺を殺すのは良いが、バチカンの犯人はお前らにされている事を忘れるな。」


 勿論、俺が既に推測した言葉が現実になっただけだ。

 そして、兄さんはIWCなどの欧米の諜報機関の下部組織であるこの研究所に何らかの要因で雇われたのだろう。

 だからこそ俺は…、


「兄さん。どうして、俺やマリーナたちが犯人にされているんだ。」


 俺は犯人すり替えが彼らの常習手段であるが、どうしてIWC寄りの人間である俺の兄さんがそれを言ったのか分からなかった。


「シュタイン。俺は、給料の待遇が良かったからこの研究所に雇われただけ…。当然、俺は研究が評価されから研究室長になっただけだよ。だから、お前が俺達の妹、ドロテアを救ってくれ。」


「兄さん。」


「俺は、ドロテアを救い出せなかった。更にアメリカの悪行に加担してしまった。だから俺はお前らに殺されても文句は言えないんだ。」


「あぁ!?」


 俺は空気能力で兄さんを攻撃した。

 兄さんは結果的に俺の妹を救いたい事、研究所から良い給料をもらえるからこの研究所に雇われ、所長になっただけだった。

 つまり、彼らにとっては非常に要らない人物だったと…。

 だが、俺の妹は兄さんみたいに人情あるわけでも俺みたいに反骨心があるわけでもない。

 ましてやお金で転ぶ事など尚更、あり得ない。

 あいつは極めて非情で権威主義的だからIWCの為なら容赦なく攻撃して来るだろうと思った。

 だから、俺は兄さんの為にも妹を殺してでも救いたいと感じた。


「兄さん。結局、ドロテアがおかしい事に気付いているんだな。でも、兄さんがちゃんとしていればドロテアがIWCに異様な忠誠を誓う事は決してなかった。だから俺は、兄さんの事を赦せないがドロテアを殺してでも救って見せるよ。」


 俺は、兄さんとの戦いで兄さんが救い出せなかったドロテアを俺が救い出そうと決意した。

 あいつは、非常に権威主義的で冷酷だから確実に俺の事を殺しに行くだろうと感じた。

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