第28話 震える腕。
くそ。何で俺の腕が震えるんだ?
手から寒気がやってくる。俺はこのままなら能力を下手に使えば死に追いやられる。
どうすれば良いんだ…。
この状況…。
「シュタイン。ドイツの衣装屋で例の手袋を買ってくるんだ。」
「マリーナ。それは実費か。」
「いや、私の実費で引き落とするから共に同行しよう。」
ありがとう。マリーナ。俺は急激に腕が振るえたからそれを補う為に買ってくれるとはとんだありがたい存在だ。
貴様には何としても感謝したい位、褒めてやりたい。
「シュタイン。これから何処の店で買いたいんだ。」
「俺は別にどこの店でも良い。早く腕の震えさえ抑えれば…。」
マリーナは既に分かっているだろう。
何故なら、俺の腕の震えは、俺の指先から来る能力の反動で来ているからだ。
彼女も能力の反動があるから、それを理解している。
故に、俺は腕の震えを防ぐために、マリーナと同行した。
「ありがとう。マリーナ。」
「えぇ。アンタにこの手袋を付けたら意外と恰好良いではないか。」
「マリーナ。この手袋は革製で静電気を防ぐ能力を持っている事は知っている。」
俺は、この手袋は静電気を防ぐものだと分っている。
だが、この手袋は静電気を防ぐだけではない事を俺は知っている。
何故なら、この手袋は俺の能力である「空気を操る能力の反動」である手の震えを防ぐ程の防寒能力を持っている事も忘れてはならない。
マリーナは俺の能力を知っているからこそこの手袋を買ったのだと思ったのだろう。
俺はあいつに感謝しなければならないと思った。
だから…、
「なぁ、マリーナ。」
「シュタイン。アンタ…。」
「ありがとう。」
「あぁ、ここで止まっている訳にはいかないよな。だから早くシチリア半島の方へ向かわないとな…。」
マリーナは恐らく、シチリア半島の方に急がねばならぬ理由を知っているだろう。
だから俺はこの任務は典紀さんから受けた任務以上にマリーナも急いでいる任務である事を理解せねばならないと感じた。
———そして、ドイツのベルリンから列車でイタリアのローマへと向かった。
何だか、南へ向かうたびに移民・難民の数が異様に多くなっている。しかも、ドイツだけでなく欧州全体に変なトラックが多く走行しているから確実に何かあると思っていた。
故に俺は…、
「マリーナ。お前がシチリアへ向かう理由とそこまで急ぐ理由には何があるんだ?」
「シュタイン。私がシチリア半島の方へ向かうのにはわけがある。」
よし、こいつから情報を聞き取る事が出来る。
そして、彼女がシチリアの方へ向かいたい理由は分かれば俺も早く向かわねばならぬ理由が浮かんでくる…。
「私がシチリア半島の方へ向かっている理由は私の弟が難民輸送船の実態を調査しているからだよ。」
「マリーナ。お前、弟がいたんだ。俺も兄と妹がいるがな。」
「シュタイン…。」
あいつが弟の事を話したから俺も兄や妹の事を話さねばならないと感じた。
そして…、
「マリーナ。弟はどんな奴だ?」
俺は、あいつの弟がどんな感じなのか知りたかった。
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