第20話 カミラの入隊。

「よし、これで最終試験は合格した。これで貴様はФСБを構成する『カラプソフミーラ』に配属してもらう。」


 やはり、私が外国人のせいか、そう簡単に直属組織に生かせなかったわけね。

 でも、この位は予想できた。

 ФСБの管理能力はIWCやMA7と比較にならない程、強固だから。

 そんな組織が簡単に外国人に地位を与える事等あり得ない。

 それ故にまず、『カラプソフミーラ』に所属してこれからの話を知らなければならないと思った。



 ———同時刻


 俺達はジェイコブ・トルドーがアメリカIWCのスパイだと判明し、これから『カラプソフミーラ』の情報が盗まれていないか確認しようとしていた。

 勿論、トルドーはカナダの諜報機関出身だと分っていたが、彼の出自などを調べねば何か怪しいと思われかねない為、徹底的に調べないといけなかった。

 だが…。


「典紀さん。あの、トルドーという男の出自を調べたけど謎が多い…。」


「そうか。しかし、どうしてトルドーの情報を調べても名前が出てこないのか俺には分からない。」


 俺だけでなく典紀さんもトルドーがどんな男なのかよくわからないらしい。

 なら…、


「マリーナ。トルドーという男は何処に所属していた。」


 典紀さんがダメならマリーナに聞くしかない。


「シュタイン。申し訳ない。私の出自を調べたのだが、その様な資料が全然ない事に違和感がある。一体、あいつは何者なんだ…。」


 マリーナ、お前もトルドーという男が誰なのかよくわからんか。

 なら、俺は独自の情報を探し出さねばならないと実感した。

 彼を生かしては『カラプソフミーラ』の実態がバレかねないから余計に…だ。

 俺はそう思いながら今日はもう寝る事にした。



 そして、翌日の朝。


「『カラプソフミーラ』の諸君。今日から新隊員がここに加わる。」


 ようやく、新隊員が『カラプソフミーラ』の一員に加わるんだ。


「トルドーを失ったものの、それでも新しい仲間が来たことによりこれで戦力が補えると思えば良い。」


 チェノフスキー大統領…。

 貴様はどうしてここまで元気な演説を行っているのか謎だが、新しい仲間がここに来るのだな…。

 なら、俺はトルドーという男を探り当てる為に動かねばならない。

 そして、トルドーを早期に殺さなければ確実に俺達の命の保証がない事は既に知られている。

 だから、新しい仲間ならそれを知られる恐れがないと実感した。


「では、新隊員よ。おいでなさい。」


 新隊員が…来る。

 トンッ。トンッ。

 この威圧感は何だが彼と初めて出会った時の威圧感そのものだ。

 だが、この威圧感は既に慣れているのに新隊員が来ると妙な圧力が出る。

 はやく、新隊員よ。早く、来い。


「え~。今日からこの『カラプソフミーラ』に加わりますチェ・カミラです。これからどうぞ、よろしくお願いします。」


 カミラ。お前は、あの試験に合格したのか。

 トルドーは裏切り者の臭いがするが、彼女からその臭いがしてこない。

 だから、俺は彼女が合格した事で一安心できたと感じた。


「典紀さん。シュタイン。マリーナ。私はこうして『カラプソフミーラ』に入る事が出来たからこれからも宜しくね。」


 カミラ…。お前がここに来てくれたお陰で俺はもっと強くなれるから安心しろ。

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