第19話 カミラの合否。

 シュタインやマリーナがトルドーの件で話し合っている最中、カミラはひたすらチェノフスキー大統領の質問に答えていた。


「では、君が何故、シュタイン君の話に同調したのですか?」


 チェノフスキー大統領の質問からは威圧感を感じてくる。

 これは、私だけでなくシュタイン達も同じように感じたのだろう。

 恐らく、彼の視線は私を疑っている様に感じ、それは同時に下手な質問をすれば私が殺される可能性があるとさえ思った。


「シュタインさんは、『9・11』はアメリカの自作自演だと語った時、私はアメリカに逃げるキューバの民の行動に違和感がありました。」


「ほう、キューバの民がアメリカに逃げていく様子をみて君はどうした?」


 凄い、私が『9・11』の件やキューバの民がアメリカに逃げていく様子を語ったら大統領は私に怖い視線を向けて冷静に返答した。


 なら…。


「私は、医療後進国のアメリカに逃げていく行為にキューバの民はどうかしているの?と疑い始めた時、シュタインさんの『9・11』テロの自作自演についての話を聞いた事でアメリカの化けの皮が剥がれ、理解できたと思いました。」


 私が言える事はそれ程多くない。

 けど、真実でも虚実きょじつであっても私が言える事だけをきっぱりと言わなければならないと思った。


「よし、君はどうやら嘘をついていないようだ。今度は実技試験を受けるから暫くはこの部屋で休憩してくれ。」


「分かりました。」


 私はその言葉に何かありそうな雰囲気を持ちながらもしばらくはここで待避しながら警戒した。

 恐らく、休憩時間でも私の様子は誰かに見られている。

 そうなれば、安易に下手な行動が出来ないのは当然の事だね。

 だから私は、大人しく待つしかない。

 そうでないと誰かがカメラを使って盗聴する可能性から、余計にそう思わざるを得ない。

 だから、次の試験を来るまでカメラの様子を警戒しなければならない。

 何故なら、そのカメラで私が監視されているからだ。

 だから気を抜くと私は落とされてしまう。

 よって、合格しなければ気を抜けないと感じていた。


(しかし、ここまで神経を使う試験とは思わなかった。でも、合格すればシュタインさんも安心していられるからここは踏ん張って頑張らないと…。)


 それ故に私はここで踏ん張らないとФСБの試験に合格できないと思った為、この休み時間でも緊張を解す訳にはいかなかった。

 この試験には何としても合格しなければならないからな。


「よし、休憩は終わりだ。」


「チェノフスキー大統領。お帰りになされましたか。」


「あぁ、貴様が休憩時間でもカメラの様子を警戒しながらやったとはさすがだ。これで最後の試験に突入する。」


 よし、これが最後の試験だ。

 けれど、最後の試験の前にもカメラが仕込まれている事を考えると決して油断はできないと私は思っているからこの難局を何としても乗り切らなければならないと思っていた。


「チェノフスキー大統領さん。この部屋にはカメラがあるのは私の休憩時間でも試験の様子を見える為ですか。」


「あぁ、そうだ。貴様の休み時間でも私は別室で監視するのは当然の事ではないか。」


 やはり、そう来たか。

 流石はФСБ。簡単には合格させてくれず、尚且つ志願制がない事はあるな。

 よし、私も最終試験を受けてやろうではないか…。

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