第15話 異国の盗聴者。

典紀のりきさん。俺が分かる範囲でWTC倒壊を語るよ。」


「えぇ、それでどうしてWTC倒壊についておかしいと思ったんだ。」


 やはり早速、WTCの建物の構造について話さなければならないな。

 そう感じた俺は、これから本格的にWTC倒壊についての情報を思い出せる範囲で話すしかない。


「典紀さん。あのビルが突っ込んだ階は凄く高い位置にあっただろ。少なくともWTC1に関しては78階に飛行機が突っ込んだ。」


「成程。78。ФСБの情報によるとあの411mあり、110階建て。そして、1階あたりの高さは411/110になり、3.74mになるな。」


 そうか、高層ビルの高さが3mであるならフロントである1~2階あたりはもっと高くてもおかしくない。

 そう思うと、78位置になる。

 つまり2時間以内で崩壊する事はあり得ない。

 そしてその倒壊速度も15秒以内で倒壊する事がないのも確かだ。


「それで、783.74×78にすれば位置が大体わかるな。」


 俺は、典紀が述べた公式を参考にすれば78階の位置を大体当てられると思った。

 まず、411m205.5m

 そして衝突した78階はこれよりも遥かに高い位置に位置しているから重力加速度を含めても完全倒壊はまずありえない。


「典紀さん。3.74×78は約294mの高さであり、明らかに中央階より遥かに高い。」


「つまり、飛行機の衝突だけではWTC倒壊はあり得ない事になるね。他に何か仕掛けている可能性が高い。」


 マリーナ。お前、こうやって言っているのは俺への配慮なのか。

 それとも、WTCやバクタラン劇場襲撃事件で英米仏を潰したい意思の表れなのだろうか。

 いずれにせよ俺からすれば彼女が米仏政府を恨んでいるのは変わりない事は分かる。


 だから…。


「ちょっと、待った。シュタイン。」


「どうした。」


「なんか、俺らの話を盗聴しているカメラがあるんじゃないか。」


「…。」


 おい、何でこのようなロシア料理店に俺らの情報を盗み聞きする輩がいるんだ。


 密室の料理店を選んだのにどうして丸聞こえされるんだ。


 俺はここの料理店にカメラ設置に違和感を持ちながらカメラが何処にあるか俺自身の目で見つける事にした。


――――ドロテア・アメリカサイド


 私は、『9・11』情報を漏らしたあいつが許せない。

そして、IWC本部ではシュタイン達阿保兄貴の情報をカメラで盗聴していた。


阿保兄貴アホアニキ。何で、アメリカの裏情報を漏らしてアメリカの汚名を作らせたくせに何を悠長にロシアで仲間たちと話しているんだよ。」


「あぁ、ドロテア。お前の言う通り、あいつは阿保だよ。でも、あいつの隣にいる女を見てみ。」


「ビル・ジェイコブさん。あの女は…。」


 私の名はエンデラ・ドロテア。


 エンデル・シュタインの妹であり、彼がロシアに亡命後もIWCの職員として働いている。


 そして、愛しの彼氏であるジェイコブという男性と共に阿保兄貴の様子を見ていた事で私は怒りを隠せなかった。


「シュタインさんと共に逃げた女だな。」


「そうだ。あいつはシュタインを使ってロシアに情報を漏らす気でアメリカに潜入した諜報員スパイだ。」


「でも、どうやってデラウェア州にある刑務所から逃げたんだろうか?」


 私は実の兄であるシュタインやマリーナがどうやって刑務所から逃亡したのか非常に気になっていた。

 しかも、あいつの背後にはФСБが存在している事から捜査は慎重にならざるを得なかった。

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