第13話 逆らえない指導者。

「シュタイン君…。」


 やばい、俺がいきなり名前で呼ばれた俺はアメリカの実態をロシアに暴露する為に動いているのにこの強面こわもて大統領の前では何を言ってよいかわからない。


「俺は、エンデル・シュタイン。元IWCの職員で9・11同時多発テロのアメリカ自作自演を暴露する為にここへ亡命した男だ。」


 やべぇ、この人の圧力からか口の動きが全然動かねぇ。しかも、威圧感から口が動震えていた。


「そうか。シュタイン君は、例の9・11テロとアメリカ政府の実態を知っているようだな。なら、貴様は『カラプソフミーラ』の一員として入隊してもらう。」


 あいつから発せられる妙な威圧感から口がなかなか動かせなかったが、アメリカ政府や9・11テロの真実を知っている事を話すと途端にあいつは俺を好意的に見始めた。

 それでも。相変わらず強権な事は変わりないが…。


「そして、シュタイン君の近くにある女性は誰だ?」


「私ですか。」


 大統領の視線は俺からカミラの方に視線を変え、これからあいつに重要な事を話そうとした。


「私の名前はカミラ。キューバからアメリカに逃げた民にアメリカの内情を告発する為にここに来た少女だ。」


「成程。なら、貴様はこれからきつい試験を受けてもらう。失敗すれば死ぬ可能性もある試験だ。それでも覚悟するなら翌日、俺の前へ来い。」


「了解。試験内容は私が来たら説明するんだろ。」


 カミラ、お前の覚悟は俺より十分な資質を持っているだろう。


「あぁ、そうだ。だから、覚悟があるかどうかを試す。受けると決めたなら説明しても良いだろう。」


 流石は、元『КГБ』の職員だけであって威圧感と恐怖感が強い。

 けれど、カミラは俺に比べてずっとメンタルが強い気がして安心した。



 それから、モスクワの夜。


「ここが俺たち『カラプソフミーラ』が普段住み込む家だ。基本的に共同住宅なのは情報を漏らさない為らしいぞ。」


「そうか。それならありがたい。」


 ようやく、俺に安心して住める場所が提供されたと感じた。

 あの内部告発から俺は安心して寝られる日が殆どなく死刑に対する威圧感や恐怖感などで俺は日々、眠る事が出来なかった。

 それでも、こうして『カラプソフミーラ』の一員になった事で俺は安心して寝られるのだと思っていた。


「シュタイン。これから私とモスクワで酒を飲みに行かないか?」


「えっ。夕方なのにもう酒。」


 マリーナがいきなり酒を要求した事に俺は驚きを隠せなかったが、少なくともロシアはアメリカと異なり、お酒に関しては寛容なのでそれだけで安心できると思った。


「よし、典紀。ジョンソン。シュタインを誘ったぞ。」


「マリーナ。お前はよくやった。」


「シュタイン。これから専用の貸し切り部屋でゆっくり話に行こうぜ。」


 典紀さんもジョンソンさんも俺の事を認めているせいか、これから俺と共に酒を飲みに行く事を心から許したようだ。

 だが、本音を話すわけにはいかない。何故なら、ロシアではちゃんとして振舞いをしなければ俺の居場所が確実に失われてしまう。

 だからこそ、俺はもうロシアには逆らわぬよう、心がけようとした。



 そして、これからモスクワにあるボルシチ専門店でこれから酒とボルシチを注文して専用の貸し切り部屋でアメリカや9・11の事を話す事にした。

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