第17話

後書き



後書きは滅多に書きません。


しかし、この作品に限っては、どうしても伝えておきたい事があるのです。



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人間とは不思議な生きものです。


とても『スピリチュアル』な生きものだと思います。


スピリチュアルとは、霊的なという意味です。


霊的な世界と言えば、呪いや復讐の物語が連想されがちですが、これは違います。仲の良い夫婦の物語です。


作品そのものの記述の工夫や構成については後に記します。



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光圀公と斉昭公についての補足です。


常磐神社は明治維新後に創建されています。偕楽園の方が早く開設された訳です。常磐神社は1945年の空襲で一度、焼失しています。


しかし、水戸をはじめ全国の有志の方々の寄付で再建されたと記録にあります。


【水戸黄門】の映画やドラマは昭和の時代に数多く放映されました。時代劇・歴史に興味のない方でも、水戸黄門だけは知っていると思います。


「この印籠が眼に入らぬか! こちらにおわす方をどなたと心得る! 畏れ多くも先の副将軍・水戸光圀公にあらせられるぞ! ○○、頭が高い! ひかえおろう!」


悪代官は腰を抜かして「ははーっ」とひれ伏します。


権威を笠にきて、庶民を苦しめる悪代官が懲らしめられる物語は痛快です。


しかし、これは江戸時代の講談師の創作です。


光圀公は家康公の孫ですから、徳川時代初期に生きた方です。(1628~1701)【水戸黄門伝説】は300年以上にも亘って人気を博し、それが平成のはじめ頃まで続いた計算になります。


徳川幕府の歴史(1603~1868)よりも長いのです。驚くべき事です。


それほどに水戸光圀公の名前は知れ渡っていますが、実は斉昭公も水戸の誇りなのです。



この二人に共通するのは【愛妻家】であった点です。



斉昭公の正室(妻)は、吉子女王(よしこじょおう)で、京都から嫁されました。有栖川宮織仁親王の第12王女(末娘)です。


吉子女王は第10代水戸藩主・徳川慶篤の母、そして最後の将軍、第15代将軍・徳川慶喜の母です。


第12代将軍・徳川家慶の正室・喬子女王(たかこじょおう)の妹に当たります。この結婚は喬子女王が薦めたのです。


京都から正室を迎えた事も光圀公と共通しています。


二人に際立つ共通点は、学問を奨励し、人材育成に尽力し、愛妻家であった事です。


光圀公には【泰姫】

斉昭公には【吉子女王】


吉子女王は、斉昭公(31歳)と結婚した時、自分は27歳で年増だから、側室を沢山つけても構わないと申し出ています。斉昭公の実母にです。


けれども、斉昭公が最も大切にしたのは、やはり吉子女王でした。それは正室に迎えたぐらいですから、吉子女王も魅力的な女性だったに違いありません。



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さて、本題は、ここからです。とても不思議な、そしてスピリチュアルな事実をお伝えしたいと思います。



好文亭の近くに【左近桜】という見事な大樹があります。


左近桜は、登美の宮(吉子女王)が斉昭公のもとへ降嫁の折りに、仁孝天皇から下賜かしされたものです。


仁孝天皇は、この良縁を殊の外、喜ばれたのです。


婚約の勅許を下した仁孝天皇は、「水戸は先代以来、政教能く行われ、世々勤皇の志厚しとかや、宮の為には良縁なるべし」と満足したと伝えられています。




左近桜は山桜の一種で、開花に先立ち葉が出現します。


偕楽園の左近桜は、京都御所、紫宸殿の左近桜の根分けのものです。


吉子女王と共に、京都から水戸へ。


左近桜は仁孝天皇の(宮家の娘の幸せを願う)桜。


そして、斉昭公と吉子女王の仲の良さを象徴する桜です。


更に、京都と水戸を繋ぐ桜と言えるかも知れません。


左近桜は、平安京の内裏にある紫宸殿正面の階段から見て左にありました。だから左近なのです。


対して、右にあるのが右近橘です。


ところがです。歴史は奥が深いものです。


最初に紫宸殿前に植えられたのは、実は梅だったのです。


桓武天皇の平安京遷都のときに植えられたのですが、承和年間(834年~847年) に枯死してしまいました。


仁明天皇の時に、梅の代わりに桜を植えたものが左近桜として、現代に伝えられたのです。


100種類3000本の梅の名所、偕楽園。


その中で、ひときわ目を引く左近桜。


高さが16mもあります。見事な一本桜です。


京都から降嫁された吉子女王さながらに、見栄えがあり、圧倒的な存在感があります。


そして、この左近桜は、文字通り、好文亭の東(左近)にあるのです。


精緻に計算された配置で植えられていたと気づかされます。


先ず一点、これを覚えておいて下さい。

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