人と魔物、作中の全ての恋が愛しい

人間と敵対していた魔王が倒れて数年、魔物が人間に迫害される時代。
主人公は、かつて魔王を倒した勇者パーティの一員。
その主人公を中心に、昔の仲間や、旅の途中で会った人と人外の異種恋愛を連作形式で書きつつ、再び動き出した陰謀に人間と魔物が立ち向かう。

ストーリーは場面ごとに様々な視点で進められるけれど、それぞれの視点人物が自然に考え、心情を動かしている。
登場人物が多くても、それぞれ異なる背景があり、特徴的で、魅力があり、埋もれて忘れてしまうこともない。
多数の人物を物語の中で動かすことにかけて、この作者は名手だ。

だから、ドラゴンが、ハーピィが、ラミアが、スライムが、それぞれ幸せな恋をできる。幸せな恋の先も描ける。
作者の得手と作品のスタイル・テーマが最高に噛み合った良作。