第6話 七つの試練
「よくぞ来た、ギルバードよ」
「お久しぶりです。海王トリトン様」
ギルバードは跪き、頭を垂れた。
「面をあげよ」
「はっ」
ギルバードは微かに震えているが、怯えを表情には出さなかった。
「――何か申し開きがあるか?」
海王が静かで重い言葉を放つ。
「この度のことはすべて私の不徳の致すところです。どのような裁きも受ける所存です」
「……我が娘へ誓ったことを覚えているか」
「はい」
「絶対に悲しませるようなことはしない。泣かせるようなことはしない。そうおぬしは誓ったな」
「はい。その通りです」
「それなのに、なぜ……なぜこのような」
海王がわなわなと震える。しかし、海王はそれを堪えた。怒りが浮かびかけた表情が元通りになる。
「――誓いが破られたことは残念である。それによりおぬしの国と海に住む我々と結ばれた信頼関係が大いに揺らいでしまったことは誠に遺憾だ」
「申し訳ございません」
「真摯に受け止めよ。そして自分の行いを悔い改めよ。その為の試練を、我らは与えよう。その試練を乗り越え、再び我の前に立った時……再びおぬしらと友好な関係を築くことを誓おう」
「はっ」
ん? 試練?
ってまさか……海王よ、ギルバードにあれを受けさせるつもりか。
あの“七つの試練”を? 無茶だ。いや、無茶を承知で受けさせるのか。
「ギルバード王よ。おぬしに“七つの試練”を与える。同行者はレオン、そしてわが国の精鋭の1人を与える。過酷な試練だが、これを受ける勇気と覚悟はあるか」
「はい」
おーい。さらっと俺を巻き込みやがったな、おっさんめ。
こりゃキツイな。前はアイとカイルがいたから何とか切り抜けられたが、今回は俺と見知らぬ魚人と戦いにはほとんど縁のなかったギルバード……詰んでねぇか、これ。
しかし、受けないという選択肢はない。
「よし、ゲートを開け」
「はっ」
鉄仮面を被った魚人の騎士が、俺たちの前に歩み出る。魚人の持つ三つ又の槍が輝き、空間に歪みが生じる。
「行くがよい、ギルバードよ。見事試練を乗り越えてみせよ」
ギルバードは息を呑み、空間の歪みに手を伸ばす。その手は激しく震えている。
「わ、わわわっ!?」
瞬間、ギルバードの姿が消える。空間転移したか。
「それじゃ、ちょっくら行ってくる」
「レオンさん……何だか胸騒ぎがします……」
「……アイ。万が一に備えて、船に戻っていてくれるか?」
「……はい。お気をつけて」
アイの嫌な予感は当たるからな。白鯨号の設備の中であれば、アイは海底の俺たちの動きを感知できるはずだ。
俺は空間の歪みに手を触れた。
長い試練が、始まる。
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