居場所を求めて

「亜人の国……だと?」

「そうにゃ!」

 ショコラはふんと鼻を鳴らして頷いた。

 そんなものが本当に存在しているというのだろうか。

「……オレには関係ないことだ。オレは亜人ではなく、キメラなのだからな」

「だいじょうぶだいじょうぶにゃ! バレットは亜人にしか見えないにゃ。それに、なんかキメラの生き残りも、亜人の国で暮らしているみたいにゃよ?」

「キメラの――生き残りだと?」

 自分の他にも生き残りがいることに、バレットは驚いた。

「まー、ここでの暮らしも悪くにゃいけど、仲間がたくさんいるほうがきっと楽しいにゃよ! さぁ、バレット! ショコラちゃんと一緒に亜人の国に行くにゃ!」

「……待て。そもそもそれは、どこから得た情報だ」

「レオナ様の“おともだち”にゃ」

「……何?」

「さっき、レオナ様のおともだちがきてたにゃ。レオナ様に、ここにいる亜人たちを引き取りたいって言ってたにゃ」

 レオナ様のおともだち?

 それはかつて世界を救ったという、勇者やあのレオンの仲間たちのことなのだろうか。

「……信用できるのか、そいつは」

「んー、わかんないにゃ! でも、レオナ様のお友達だから、信用できると思うにゃ! 悪いにおいはしなかったし、大丈夫にゃ! たぶん」


 バレットは考える。

 どこにいても、本当の居場所はないと感じていた。

 レオナは自分の心を癒してくれ、住む場所をつくってくれた。亜人たちも多く招き入れ、自分のこの異形が目立たないように配慮もしてくれた。しかし、この孤独感は消えることがなかった。

 その亜人の国が、自分の孤独感を埋めてくれるとは思えない。しかし、この場所にいるよりはいいのかもしれない。同じ境遇のキメラがいるのであれば、なおさらだ。

 傷をなめ合いたいわけではない。ただ、バレットは欲しかった。“仲間”という存在が。

「……いいだろう。オレもその亜人の国とやらに行こう」

「にゃっ! そうと決まれば、レオナ様のとこに行くにゃ! すでにみんな集まっているにゃよ!」

「……わかった」


 淡い期待。

 それでも、それにすがるしかない。

 バレットは願い、歩きだした。

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