新たな船出

 雲ひとつない青空。


 海の天候は変わりやすい。だが、白鯨号ならばいかなる嵐をも乗り越えられることだろう。

 またこの船に乗ることができるとは、なんとも感慨深いものがある。あの頃の感覚がよみがえってくるようだ。血がたぎる。


「準備はできているな?」

 ルドルフが言う。

「ああ、いつでも行けるぜ」

 町の周辺にはもう、魔獣の姿はなかった。他に魔石は見当たらなかったし、ひとまずは安心だろう。

 しかし何だ。旅の最初の頃は、まさかこんなことになるなんて思いもしなかったな。カイルめ、本当にいい時期に手紙をくれたもんだ。もしかしたらあいつ、世界に起きている異変を予感して……んなわけないか。いくらなんでもできすぎている。


「よぉし、野郎ども! 出航だ!」

「おう!!」


 船が動き出す。ゆっくりと、そして力強く。



 ここより、俺の旅は新たな局面を迎えることになる。



 過酷な戦い、そして――別れが待ち受けていることなど、この時の俺は思いもしなかった。


 運命の歯車は、すでに動き始めていた。


 もう、誰にも止めることなどできはしない。




 まばゆい太陽の光に、俺は目を細めていた。

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