新たな船出
雲ひとつない青空。
海の天候は変わりやすい。だが、白鯨号ならばいかなる嵐をも乗り越えられることだろう。
またこの船に乗ることができるとは、なんとも感慨深いものがある。あの頃の感覚がよみがえってくるようだ。血がたぎる。
「準備はできているな?」
ルドルフが言う。
「ああ、いつでも行けるぜ」
町の周辺にはもう、魔獣の姿はなかった。他に魔石は見当たらなかったし、ひとまずは安心だろう。
しかし何だ。旅の最初の頃は、まさかこんなことになるなんて思いもしなかったな。カイルめ、本当にいい時期に手紙をくれたもんだ。もしかしたらあいつ、世界に起きている異変を予感して……んなわけないか。いくらなんでもできすぎている。
「よぉし、野郎ども! 出航だ!」
「おう!!」
船が動き出す。ゆっくりと、そして力強く。
ここより、俺の旅は新たな局面を迎えることになる。
過酷な戦い、そして――別れが待ち受けていることなど、この時の俺は思いもしなかった。
運命の歯車は、すでに動き始めていた。
もう、誰にも止めることなどできはしない。
まばゆい太陽の光に、俺は目を細めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます