第12話 ルナとマカロン

 その夜のこと。

 床に転がっているマカロンは、寝相が悪くてベッドから落ちて目を覚ましたルナに話しかけた。

『おい、ルナ』

「なんですか~、マカロン。眠たいですー、痛いですー。お腹いっぱいでハンバーグもう食べられないですー」

『オマエ、めっちゃ食べてたよな、ハンバーグ。そうじゃなくて、あの魔石から声が聞こえたって言ったよな』

「そうですー。なんか、女の人の声が聞こえたですよ。なんて言っているのかわからなかったですけど」

『……やはり……そうか』

「マカロン?」

『オレ様も少しばかり思い出したのよ。オレ様が成すべきことを。しかし、約束は……守れなかった』

「よくわかんないですぅ。眠れないなら、ルナが添い寝してあげるですぐぅ~」

『一瞬で寝やがったな……こいつめ』

 ルナはマカロンの柄の部分を抱いて寝た。



 ――気が付くと。



 草原の中に、立っていた。


 懐かしい景色だ。

 けれど、そこがどこなのか思い出せない。


 自分を呼ぶ声がする。名前の部分は聞き取れない。

 振り返る。

 そこには変わらぬ笑顔の――彼女が立っていた。


『今のは……』

 自分の夢なのか、それともルナの夢なのか。わからない。

 自分が、自分でなくなりそうな感覚にマカロンは怯えた。

 しかし、ルナの小さな温もりが気分を落ち着かせてくれる。

 


 そうか。オレ様が……オレが……守るべきものはまだ……。



『っておーーい、ルナ。ちょっと起きろよ。オマエのよだれでオレ様べたべた』

「う~ん、マカロンあまいです~、ふふふふ~」

『うおっ! なめるな! かじるな! 誰か、誰かー!』


「うるせぇ、マカロン! 寝ろ!」

『あーれー』


 レオンはルナごと、マカロンを部屋の窓からぶん投げた。


 夜は静かに更けていく。

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