おにぐものおはなし(1)

 むかーしむかし、あるところに人間をたべてしまう、こわいこわい、くもたちがいました。とてもこまったひとびとは、くもたちのすみかである森をやきはらうことにしました。

 もえさかるほのおに、くもたちはやかれました。さらに、にげまどうくもたちを、人間がつかまえます。くもがつくる糸はとてもうつくしかったからです。

 のこったくもは、たったいっぴきだけとなってしまいました。

 ひとりぼっちになったくもはなきました。そして人間たちをうらみました。

 くもはうらみをはらすために、つぎつぎと人間をおそいました。けれどうらみははれません。くもはまいにちまいにち、人間をたべました。けれどかなしみはきえません。

 いつしかくもは、おにぐもとよばれるようになりました。


 ひとびとはおにぐもをやっつけるために、やりやけんをもってたたかいました。おにぐもはきずつきながらも、人間たちをみんな、かえりうちにしました。

 たたかいにつかれはてたおにぐもは、あたらしい森にかくれました。

 そこでもおにぐもはひとりぼっち。つらくてくるしくて、かなしくて、おにぐもはまいにちなきました。


 あるとき、おなかがすいたおにぐもは、ひさしぶりに人間をたべようと森からでました。


 そこで、ひとりの人間のおとこの子をみつけました。みちにまよってこまっているおとこの子に、おにぐもはちかづきます。

 それはそれは、とてもやさしい目をしたおとこの子でした。

 おにぐもは、おとこのこをたべることができませんでした。

 どうしていいかわからなくなったおにぐもは、おとこの子にみちあんないをしてあげることにしました。


 人間をにくむこころを、むねにいだいたまま――



 つづく

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