或る記憶3
炎上し、崩れていく城を彼らは眺めていた。
「ふぃー! やっと終わったな」
「いえ……ここからが始まりです」
「――そうか。そうだな」
長きに渡る戦争で疲弊し、分裂した国を、そして民の心を総合しなければならない。どれほどの労力になるのか想像もつかないが、悲劇しか生まなかったこの戦争よりも遥かに有意義なものとなるだろう。
「それで、その子はどうするつもりだ?」
「……私が育てます」
その頭をぼかんと叩かれる。
「まぁたオマエひとりで抱えようとする。血筋的にはその子はオレの……孫? だぞ。ってオレ、おじいちゃんかよ……」
頭を抱える男を見て、微笑んだ。
「オマエは、すぐにでもやらなきゃならねーことがたくさんあるんだろう? ま、子守なら任せときな。だが……本当に……いいんだな?」
「はい。この子は大丈夫だと信じています。きっと……我々一族と、人間との希望となることでしょう」
「そうか。オマエがそう言うなら、オレは従うまでだ」
晴れ間が広がっていく。
隣で男は、久々に見る青空だなと笑っていた。
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