第10話 決着!

 そこからは、ほんの一瞬だった。

 

 僕の剣を受けたウルクの鉈に亀裂が入る。衝撃に、僕とウルクの体勢が崩れる。

 ウルクが小さく咆える。体勢を崩したまま、ウルクは鉈を投げてきた。鉈は僕の鼻先をかすめて後方に飛んでいった。

 ウルクの足元の床がびきっと割れる。太ももが2倍くらいの大きさになっている。

 バンと音がしたと思ったら、ウルクの顔が僕の目の前にあった。ウルクの右手が僕の顔を掴もうとしているのが見えた。

 しかし、その手が、急に動きを止めた。

「クレスちゃん! 今よっ!」

 横から、セエレさんの声が聞こえた。糸でウルクの動きをとめてくれたんだ。

 僕の身体が動く。剣がひと際強い光を放つ。剣が緩やかに動いていく。剣先がそっと、ウルクの胸の魔石に触れる。


 音もなく、魔石が消えていく。周りの黒い霧も消えていく。

 そして、訪れる静寂。


 汗がどっと噴き出した。


「……あれ? アタイ、何を?」

 ウルクは目をぱちぱちとさせている。

「お嬢! 正気に戻ったんだな!」

「よかった!」

 オークたちはウルクを囲み、歓声を上げる。

「そっか、アタイ……魔石に。あ、他のみんなは!?」

「わからない。この階と5階層はまだ……どうなっているのか確認できていない」

「わかった。探しに行くぞ!」

「応ッ!」

 オークたちは地鳴りのような音を立てて駆けていく。

 

 僕は大きく息を吐く。

 周囲を見渡す。


 あの黒い人型は消えている。嫌な気配もない。


 これで終わった……のかな7?

 何がなんだか、もう、さっぱりわかんないや……。

 とりあえず……休んでいいかな。身体に力がはいらない。僕は床に座り込んだ。

 眠たい。何も考えられないや。目も開けていられない。


 いいや、寝ちゃおう。


 ……おやすみなさい。

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