第9話 必殺技!

「必殺ぅ! リぃぃぃフぅ、カッター!」

 ドラゴちゃんがなんと、頭の葉っぱを取り外して、ぶん投げた!

 葉っぱはすごい速さで回って、気持ち悪い植物を切り裂いた。

「すごい、ドラゴちゃん!」

「へへっ!」

「でもどうしよう、あたし必殺技とかない!」

「シエルおじょうちゃんには、するどい爪があるじゃありやせんか!」

「あ、そうだった! ていっ!」

 わたしは植物に向かってキックした。植物の茎みたいなところがスパッと切れた。

「やった!」

「さすがシエルおじょうちゃん!」

「えへへ! うわっ! ダメだ、すぐ治っちゃってる!」

「厄介な植物ですぜ……」

 切っても切っても、植物はすぐに元通り。きりがないよー!


「こんなときに言うのもなんだけど、ドラゴちゃんっていい声してるよね!」

「そうですかい? まぁ、声にはちょっとした自信が……あ! 思い出したー!!」

 ドラゴちゃんが急に大きな声を出したから、びっくりした。

「おいらの超! 必殺技がありやしたー! シエルおじょうちゃん、ちょいと耳をふさいでてくんな」

「え? うん」

 あたしは翼で頭を覆い隠した。

『くらえ、ヴォォォイド・ヴォイス! おおおぉぉおお~!』

 うわわわわっ!?

 なんかすごいびりびりする!

 耳と頭が痛いよーー!

 なんか突風みたいなのがふいてきて、あたしは飛ばされてしまった。

 起き上がり、見渡すと、植物たちがバラバラになっていた。

「す、すごーい! ドラゴちゃん、何をしたの!?」

「おいらの声は武器になるんでさ!」

「声が、武器に??」



 声が、武器に。

 

 声。


 あ。

「あーーーーーっ!!!」

「うわっ! びっくりした! シエルおじょうちゃん、どうしやした!」

「あたしも、ちょうひっさつわざできるかも!」

「ど、どういうことですかい?」

「歌!」

「うた?」

 そう、そうだ!

 あたしには歌がある!

 みんなを元気にして、力を与える歌がある。

 あたしは歌い始めた。ダガーおにいさんの伴奏を思い出し、それに併せて歌う。

「す、すげえ……すげえキレイな声だ……シエルお嬢ちゃん、最高ですぜ! うおーっ! なんか元気出てきたぜ! おいらも歌うぜー!」

 ドラゴちゃんの声が、あたしの声に重なった。それであたしも、気持ちよく歌えた。声と声が、ぴったりとくっついて、それですごくキレイに響いていく。


「く……う!? なに、この声! 力が抜けるっ……おのれ、あいつらか!」

 花のおばさんが、頭を押さえて苦しんでいる。周りの植物たちは再生できずに、もがもがと震えている。

 あたしの元気の出る歌は、悪いヤツらをこらしめることができるみたいだ! やった!

「うるさいっ! その歌を止めろ!!」

 花のおばさんが、こっちを向いた! すごいこわい顔!

 そのこわいこわい顔が、とても痛そうに変わる。

 ダガーおにいさんだ! ダガーおにいさんが、あのくりむぞん? とかいうので、花のおばさんのおなかを突き刺した。変な色の血が出てる。痛そうー。

 さらにダガーおにいさんが、おばさんの顔を斬りつけた。左目からほっぺたの部分が切れて、そこから、やっぱり変な色の血がふきだした。

「ぐ……う……きさまらあっ! 八つ裂きにしてくれる!」

 よろけたダガーおにいさんに、花のおばさんがナイフのように鋭い葉っぱを突き立てようと、手を振り上げた。

「ダガーおにいさん、危ないっ! だめーーーーっ!」

 振り下ろされる、鋭い葉っぱ。


 でもそれは、ダガーおにいさんには届くことはなかった。

 なんか赤いものが、花のおばさんの手に嚙みついている。

 あれは、トマトさんだ。まじゅうになったトマトさんが、鋭い歯でおばさんをがぶがぶしている。


「あらあら……セレスティアお姉さま……邪魔をしないでくださる!?」

 セレスティアちゃん? いつの間にあんなところに。

 花のおばさんは、つりあがった目を、セレスティアちゃんに向けた。

 そっか。あのトマトはセレスティアちゃんが……。


 セレスティアちゃんは、ゆっくりと、ゆっくりと花のおばさんの前へと歩いていくのだった。

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