にんげんになったゴーレムのおはなし

 むかーしむかし、あるところに大きな大きな石のきょじんゴーレムがいました。

 ゴーレムには『こころ』がありませんでした。

「こころって、なんだろう」

 ゴーレムはこころをさがしにいくことにしました。

 ゴーレムは海をこえ、山をこえ、谷をこえ、せかいじゅうをたびしました。しかし、こころはみつかりませんでした。

 海のなか、くものなか、じめんのなか、くさきのなか、どこをさがしてもこころはみつかりません。

 ごーれむはなんねんもなんねんもこころをさがしましたが、こころはみつかりませんでした。そしてゴーレムはつかれはて、ねむってしまいました。


 とあるとき、ひとりのおとこがゴーレムのうえにおちてきました。

 ゴーレムはめざめます。

「やあ、ゴーレムくん。ぼくとともだちになってよ」

 かれはえがおでそういいました。

 ともだち?

 ともだちってなんだろう。ゴーレムにはわかりませんでした。


 それからふたりはいっしょにたびをしました。

 ゴーレムのさがしているこころをふたりでさがしました。

 ともだちはゴーレムにいろいろなはなしをしました。たのしいおはなし、かなしいおはなし、ぼうけんのおはなし……それをきいて、ゴーレムはふしぎなきぶんになりました。

 かれといっしょにいると、なんだかむねがわくわくする。ごーれむはそうおもいました。


 あるとき、ともだちがおおけがをしました。

 このままだと、ともだちがしんでしまう。ゴーレムははじめて、かなしいとおもいました。

 ゴーレムはじぶんのいのちをつかい、ともだちをたすけることにしました。

 ゴーレムのいのちのひかりが、ともだちのけがをなおしました。ゴーレムはたおれます。

「ぼくをひとりにしないでよ、ゴーレムくん」

「ありがとう、わたしのともだち。わたしはやっとみつけることができたよ」

 ゴーレムはついにこころをみつけることができたのです。そしてゴーレムは、うごかなくなってしまいました。

 ひとりぼっちになったともだちはなみだをこぼしました。


 なみだのしずくが、ゴーレムにおちていきました。

 

 するととてもふしぎなことがおこりました。

 ゴーレムのからだがまた、ひかりかがやきだしたのです。

 

 ひかりはどんどんつよくなって、なにもみえなくなりました。

 そのひかりがおさまると、ゴーレムのすがたがきえ、かわりにおんなのこのすがたがそこにありました。


「きみはだれ?」

「わたしはゴーレム。またいっしょにいられるね、わたしのともだち」


 こころをみつけたゴーレムはにんげんになったのです。

 こうしてふたりはずっと、いつまでもなかよくくらすのでしたとさ。

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