第2話 対決! 巨大アリ!
川辺を歩く。水面がキラキラと輝いている。大きな魚が跳ねて、水しぶきが散った。ちょっとした景色でも、何もかもが新鮮に見えた。
僕の向かう先は、この大陸の一番西にある町だ。僕は、そこにすごい剣師さまが滞在しているという情報を入手していた。その剣師さまに会って、弟子にしてもらうんだ。どんな人か、楽しみだなぁ。
あれ? なんだろう。
ふと、遠くに黒い何かが見えた。それらは、わらわらとこちらに近づいてくるようだった。人……じゃないみたいだ。まさかモンスター? 僕は草むらに姿を隠した。
段々と、その姿が明らかになる。近づいてくるのは、巨大な――アリたちだった。たぶん、僕よりも大きい。手には鉄の槍みたいなものを持っている。
アリたちは木の板のようなものを担いでいる。その上には……頭から血を流して、苦しそうな表情で横たわっているおじさんの姿があった。
そういえば聞いたことがあるぞ。町の付近に現れる、人喰いアリのモンスターの話を。なんでも人間をさらっては、巣に持ち帰って肉団子にして食べてしまうという、とても凶悪なモンスターらしい。
大変だ。おじさんを助けなきゃ。僕はアリたちの前に飛び出した。
「待て! そのおじさんを連れていくな!」
アリたちは一斉に、僕の方を見て、ぎちぎちと大きな顎を鳴らした。とても不快な音で耳が痛い。
一匹のアリが僕の前に出て、対峙した。アリは触角をせわしなく動かしている。
僕は剣を抜いた。相手がモンスターであれ、僕は負けない。僕は、強くなったんだ。絶対に、おじさんを救い出してみせる。
アリは顎を鳴らすと、槍を構えた。くる!
アリが槍を突き出した。僕はそれを剣で……弾けなかった。弾こうとして槍に剣を当てたのに、僕はそのままなぎ倒されてしまった。ものすごい力だ。受け身も取れずに地面に叩きつけられる。一瞬、呼吸が止まる。
アリは地面の僕に向かって追撃してきた。慌てて、僕は転がって槍を避ける。立ち上がると、今度は別のアリが槍を突き出してきた。受けずにかわす。
「てぇぇい!」
僕はアリめがけて、思い切り剣を振った。しかし、簡単にはじき返されてしまう。強い。でも……勝てない相手じゃないはずだ。僕はやれる。僕ならやれるはずだ。
今度はより強く踏み込んで、剣を振り下ろす。剣と槍がぶつかり、甲高い金属音が鳴り響く。そのまま受け流され、体勢が崩れる。
「まだまだぁ!」
踏みとどまり、剣を突き出す。アリは槍をくるりと回し、いとも簡単に剣を弾く。剣を握る手がビリビリと痛む。
そんな……まったく歯が立たないなんて。
腕がもう、上がらなくなってきている。息も苦しい。どうして……。
次々と槍が繰り出されてきて、僕は追い詰められてしまう。
ここは一度退いて、立て直さなきゃ。呼吸を整えて、もう一度。でも、僕の周りをアリたちが囲んでいて、逃げることはできなかった。
ど、どうしよう。
ついに、僕の握っていた剣が弾き飛ばされてしまった。剣は遠くの地面へと突き刺さる。
アリたちがじりじりと距離を詰めてくる。
もう駄目だ。こんなはずじゃなかったのに。誰か……誰か、助けて。助けて、レオンさん……!
槍が、僕の心臓当たりをめがけて突き出された、その時だった。
槍は僕の胸の前でぴたりと止まった。槍に何か、白いものが巻き付いている。槍がアリの手から離れ、飛んでいく。
「ぼうや、ワタシが助けてあげるわぁ」
そこに現れたのは、なんと――。
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