きみのなわ

『なぁ、レオンよ』

「うるさい、しゃべるな」

『ちょ、少しくらい喋ってもいいじゃねぇかよ』

「だまれ」

『おぉぉ、相変わらずひでぇな』

「……」

『おーい、レオンー! レオンサマー! あ、いてぇ! 殴るな、蹴るな!』

「あー、うるさいうるさい。何なんだよ、一体」

『あのよー、そろそろ“剣”とか“お前”とかじゃなくて、名前で呼んでくれよ。長い付き合いだろー。なぁなぁ』

「は? やだよ。そもそもお前に名前あったかよ。ああ、“害なす魔の杖(笑)”だっけ」

『いや、それは勝手にそう呼ばれているだけで、名前じゃねーし』

「じゃあ、名前何なんだよ。覚える気ねーけど」

『名前なー。思い出せないんだよなー』

「じゃなんでこの話題ふったんだよ、めんどくせーな!」

『名前ないと不便じゃん』

「不便じゃねーよ。喋る剣なんて不気味でしかない気持ち悪い。今後も絶対に人前で喋ったりするなよな」

『ちょ、そろそろ泣きそうオレ様』

「はーっ。本当にめんどくせーやつだな、お前は。名前つけてほしいんだろ。ぐだぐだ前置きはいいから最初にそう言えよな。よし、仕方ないから俺が名前をつけてやる。“害なす魔の杖(笑)”だから……害虫でいいんじゃね」

『ちょ、もう少しちゃんと考えて』

「駄剣とか?」

『真剣に考えてください』

「うーん。なぁ、アイ。何かいい名前思いつかないか?」

『結局考えないのかよこの人』

「うん? ヴィシソワーズ? ガランティーヌ?」

『お。なんかそれ、響きがいいな!』

「え? ああ、どこかの料理の名前か」

『料理って。まぁ、この際カッコよければいいけど』

「呼びづらいから、短い名前がいいなー」

『えー』

「ピンクストーム? ダンデライオン? あとは……ん? マカロン。ああ、どっかのお菓子だっけ。よし、それでいいか! 今日からお前は、マカロンだ! 決定!」

『あ、あの、かっこいい名前は。マカロンじゃなくて、その前のダンデ……』

「あ? アイのつけた名前に文句があるっていうのかお前」

『……もう、それでいいです。それで』


 魔剣。


 害なす魔の杖(笑)。


 恐るべき力を秘めたその武器は、マカロンという名がつけられ、後の世に広まることになるのであった。

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