第12話 謎の魔法陣

 なんだこりゃあ。森が邪悪な気配で埋め尽くされているみたいだ。これはただ事ではない。

「おい、力を貸せ」

 俺は剣を叩いた。


『ハイ、レオンサマ、ナンナリトオモウシツケクダサイ』

「うざいからそれやめろ」

 俺は手の甲を少し切り、血を与えた。

『はっ! オレ様は一体』

「いいから力を貸せ。魔石の気配を感じ取れるか?」

 俺は剣を地面に突き刺した。

『魔石だぁ? なんだってそんな……ん?』

「何かわかったか?」

『ちょっと集中させてくれ。なんだこれ? 魔石がひい、ふう、み……5個!? それに魔石もどきがたくさん……まてよ。この点と点を結びつけると……そうか、わかったぞ! こいつぁ、魔法陣だ!』

「魔法陣だと!?」

『ああ、でっけえ魔法陣だ。こいつはたぶん、魔力の封印に衰弱の呪い、さらに“召喚”を組み合わせた高度な複合式だ。昨日、オマエが大暴れたところが起点になってたっぽいな。どこにあったかはわからねーけど、偶然オマエが起点になってた魔石を破壊したことで、効力を失っているみてーだわ』

「魔力の封印に衰弱……? でも、レオナたちは大丈夫そうだったぞ」

『こりゃ、特定の力……例えば大悪魔とか神とかの力を封じ、弱らせてるヤツに近いな。弱ったところで使役し、その力を自分のものにしちまうんだ。だが、これは弱らせてそのまま滅する型のヤツだな』

 そうか。これがアイの力を奪い、衰弱させていた原因か。偶然、俺が起点となる魔石を破壊したから、アイは元気になったんだ。

「まさか神殿の誰かが……その魔法陣を組み立てたのか」

『うーん、そりゃあ、あまり考えられないかもだ。これだけ複雑な式をしかも簡略化させるなんて芸当、人間にできるなんて思えねー。式がわかっても、それを現実に再現することも難しいはずだ』

 すると、魔王の眷属の生き残りの仕業だろうか。そうであれば、かつて魔王を倒した戦士の一人であり、強大な魔法を扱えるアイの命を狙ったことは想像がつくが、ずいぶんと回りくどいやり方だ。それに、精霊たちも癒せなかった“死の病”にアイはかかっていたはず。アイは魔力を取り戻したことで、生きられると確信していたようだが、本当に死の病にかかっていたのか? もしや精霊たちとこの魔法陣を作ったヤツと何らかのつながりがあるのか?

 くそっ、今はもう考えている余裕はねぇか。猛獣や魔獣、さらには正気を失っているモンスターたちがわんさか寄ってきてやがる。


「おい、“5割”で行くぞ」

『うえっ!? ご、ご、5割!?』

「雑魚どもやっつけるついでに魔法陣ぶっ壊す。魔石も全部砕く。今は機能してないみたいだからいいが、どんどん敵を召喚されたら面倒だしな」

 昨日のバトルウルフは恐らく、何者かの手により召喚されたものだろう。あれに出てこられると厄介だ。

「はやくしろよ。ガンテツに聖なる力をたっぷり注入してもらったんだろ」

『オレ様と聖なる力は相性が悪いんだっつーの! ったくもう! やるぜ!』

「おう! かたっぱしからぶっ壊してやる!」

 魔石から出る瘴気も消せれば、モンスターたちも正気に戻るだろうしな。

 どこの誰かが魔法陣を仕掛けたのかわからないが、とにかくこれでアイが助かることはわかった。今はそれで良しとしよう。

 全部ぶっ潰して、元気になったアイのところに帰ろう。そして2人で、この世界を旅しよう。


「いくぜ、雑魚ども。今日の俺は……強いぜ」

 俺は漲る力を、思い切りぶつけていった。

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