僕とエリーゼ

「……行ったか。ようやく」

「行ってしまったね。もっとゆっくりしていけばいいのに」

 僕はそう言ったが、エリーゼは不満そうだった。

「我はお前と2人きりでいい」

「エリーゼ」

「あの者は我の知らないお前を知っているのだな。それが何だか悔しいし、我を苛立たせる」

 むっとして言うエリーゼの頭を僕は撫でた。途端に表情が和らぐ。

 エリーゼは僕に寄りかかる。指と指を絡めあう。


「お前にくっついていると気持ちがいい。胸が高鳴る。ドラゴンの姿だとこうはできないからな。あいつが来たから咄嗟にドラゴンの姿になってしまったが、もう封印するか」

 僕とエリーゼは唇を合わせる。

「それにしてもレオン、面白いこと言ってたね。子供の顔でも見せてくれなんて」

「できるぞ、子供」


「……えっ!?」


「この人間の姿であればな。我は人間の身体の構造を完璧に再現できる。全知全能の存在だからな。ありとあらゆる生物の構造は把握できておる。ゆえに、人間の女性を完璧に再現したこの姿であれば、生殖機能を有しているわけだ。だから、子供はできる」

「そ、そうなのか」

 びっくりだ。

 次の瞬間、僕はエリーゼに押し倒されていた。


「ふふ。あいつの期待に応えてやるとしよう」

「え、エリーゼ」

「我は……ううん、わたしはあなたの子供を産みたい」

 僕はエリーゼを強く抱きしめた。そして僕とエリーゼは、一つに溶け合った。


 ああ。そうか。そうだったんだ。


 わたしは


 僕は


 あなたに


 君に


 出会うために生まれてきたんだ。



「カイル。好き。愛してる」



「僕もだよ、エリーゼ。愛している」




 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る