歴史ツイッターで偉人のいまを見てみる?

ちびまるフォイ

偉人「ツイッターおもしろいwwwwwww」

いまなにしてる?



手のひらにじわりと文字が浮かんできた。


「いまって……て、テレビ見てるかなぁ」


というと、文字は消えていった。

いったいなんだろうとこの現象を調べると、歴史ツイッターというものらしい。

未来にいる誰かが俺に歴史ツイッターを連絡したらしい。


でも、どうして俺に。

ごくごく一般人の今を聞いてどうなるのか。


「まあいいか。面白そうだし俺もやってみよう」


アプリをインストールすると、自分では投稿できないが誰かに投稿してもらうことができる。

誰に聞いてみようか。


>スティーブ・ジョブス


半信半疑で名前を入力するとすぐに投稿が帰って来た。


『今はガレージで新しい製品の開発中だ』


「これ……まさかマック!?」


聞いたことある。マックPCの創業はガレージの開発だったとか。

適当に日付を入力したけど、こんな歴史的瞬間の言葉を聞けるなんて。


「これおもしろいな! どんどん聞いてみよう!」


歴史干渉できないように自分から連絡はできない。

それでも、歴史の人物がこんなに身近に感じられるなんて。


卑弥呼

「今は占いの真っ最中。ほんとみんな私にたよりすぎ」


織田信長

「寺が燃えてるんだよ!! それどころじゃねぇわ!!」


アインシュタイン

「エネルギーで何かアイデアないかなぁ」


なにこれ面白い!

ケータイには歴史の人物の投稿が画面いっぱいにうまってくる。


投稿依頼数も増やして、投稿者へもどんどん増やしていった。

ますます投稿も増えていって偉人も慣れたのか好意的になっていった。


アインシュタイン

「聞いてほしい! 最高のアイデアが思いついたよ!」


アインシュタイン

「光の速度ってどれくらいなんだろう。ヒントほしいなぁ」


アインシュタイン

「……彼女がほしい」



「おい研究どうしたよ!?」


歴史の教科書で見えてこない偉人たちの人間らしい姿が見えてくる。

そこが本当に面白い。


現実の異常に気が付いたのはそれからしばらくしてだった。


「すみません、当店に"でんしれんじ"というものはないんですよ」


「……は?」


バドヨシカメラにいくと電子レンジがなかった。

そんなはずはない。俺が歴史ツイッターで開発者のパーシースペンサーの投稿を見ている。

今は新しいスポーツに夢中だって投稿が……。


「いや待てよ!? もしかして、この投稿が原因か!?」


パーシーさんは歴史ツイッターにハマったらしく投稿頻度も多い。

前もって1人に複数の投稿依頼をまとめて出していたため、

それを投稿するのに夢中になって研究が進んでないのでは……。


「ま、まずいぞ! このままじゃ歴史が変わってしまう!」


歴史ツイッターのせいで、歴史が変わったらどうなるのか。

この便利な生活が奪われてしまうのか。


「どうすればいい! ブロック機能もないし、もう投稿依頼も出しちゃったし……!」


投稿にあるのは小さなリサイクルぽいマークだけ。

これを押しても投稿はやむことがない。


相変わらず歴史の偉人からくる投稿はとめどなく届く。


「も、もうだめだ……歴史の偉人をツイッターバカにしてしまった……」


やがて、電子レンジというものが完全に消失した。

この後も歴史改変は進んでいくだろう……。







パーシースペンサー

「アインシュタインのリツイートで新しいアイデア思いついたよ!」


アインシュタイン

「ノブナガのリツイートからやっとエネルギー法則がひらめいた」


織田信長

「卑弥呼のリツイート読んで占いに興味出たわ」



俺が押したリサイクルマークぽいのはリツイートアイコン。

歴史の人物はお互いの投稿を読んで、さまざまなヒントを思いついていた。


「当店に"でんしれんじ"というものはございませんが、

 瞬間調理器で0.0001秒で温めることができますよ」


「すげぇえええ!!」


歴史の改変が起きて暮らしはさらに便利に豊かになった。

めでたしめでたし。



「……でも、どうして最初に俺に投稿依頼がきたんだろ」


死ぬまでそれに気づくことはなかった。

俺の死後、リツイートで世界を豊かにした人物として歴史に名を残していた。

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