東魔王Jr.の彼女はスライムさん

世界には表と裏がある。

表とは人間が住む世界。

そして、裏とは魔族が住む世界である。

裏の世界にも社会があり、そこには魔人と呼ばれる種族が人間と同じ様に社会を形成している。


これは魔界の東地区の魔王の物語である。





「あ~マジ彼女欲しいよな~」


町中のコンビ贄ンスストアの雑死コーナーで立ち黄泉をする魔人が3人居た。


髪の毛をリーゼントにして額から生えてる角を隠している鬼の魔人『鬼村』、サングラスをしてマスクをしている羊の魔人『羊毛』、そしてこの物語の主人公である東地区の魔王の息子『東魔王』である。


「あっ鬼村よ、トーマのヤツ彼女できたらしいぜ」

「なにっ?!この裏切り者めぇー!」


東魔王の息子と言うことで彼はトーマと呼ばれていた。


「しかもこれからデートらしいぜ!」

「このリア魔充め!炸裂しろ!」

「いやー一足先に悪いね君たち」


一人彼女持ちのトーマは優越感に浸っている。

友人の彼等には話してなかったが半年間ずっと一途にアタックをし続けて先日漸くOKを貰ったのだ。


「っでどんな娘よ?」

「乙牌はおっきいのか?!」

「肌が凄く綺麗でさ、水々しくてプルプルでさ、一緒に歩いていると小柄だから歩幅が合わなくて向こうに合わせるんだよね。するとさ上目遣いで見詰めてくれてさ、もうむっちゃ可愛いんだよね!」

「こ…この裏切り者ー!」


店内でじゃれ合う3人。

だが二人とも友人に彼女が出来て本当は喜んでいるしそれをトーマは知っていた。


「ほらっ餞別だ!」


羊毛が差し出したそれは避妊具であった。

トーマは今夜は決めると考えていたのでそれを嬉しそうに受け取る。


「おっと、そろそろ時間だわ。んじゃ行くな」

「はいはい、彼女としっぽり仲良くやってこいよ」

「帰ったら400字詰め原稿用紙に感想書いて提出しろよ!」

「あははっ」


そう笑ってトーマはコンビ贄を出ていく。

後に残された鬼村と羊毛は互いに見合って…


「なぁこれから暇か?」

「まて、俺にはそっちの趣味は無いぞ」

「バカ違うよ!俺にもないわ!そうじゃなくてトーマの彼女見に行かね?」

「おっそれいいねぇ~」


こうして二人は後をつけることにした。





トーマが訪れたのは公園の噴水前であった。


「くそっデートの定番の待ち合わせスポットじゃないか!」

「俺達なんか惨めだな…」

「言うな羊毛」


噴水の前で彼女を待つトーマ。

それを草むらに身を隠して覗く木村と羊毛。

おまわりさんこいつらです。


「中々来ないな…」

「いや待て!あれは…なんだレッドスライムか…」


この世界にも魔物は居り、スライムはその可愛さや危険度の低さから魔人がペットで飼っている場合もある。

人間社会で言えば犬よりも猫の方が近いかもしれない存在である。

基本的に雑食で町を歩けばその辺にチラホラ見掛けることからも猫と同じ様な感じと判断できるだろう。


「おっトーマのヤツレッドスライム見付けて嬉しそうな顔してやがるぜ」

「つかトーマの表情なんか愛でてると言うより…」


レッドスライムは丸くふんわりした形でトーマのズボンの裾をキュッと摘まんでトーマと共に歩き出す。

その表情は非常に楽しそうでレッドスライムも心なしか赤からピンク色に変色していた。


「まっまさかアイツの彼女って…」

「と、とりあえず後を追うぞ!」


二人はバレないようにトーマとレッドスライムの後ろを付いていく。

二人は町の商店街を歩き雑貨屋の前に差し掛かる。


「そう言えば香水変えた?なんか良い匂いするね」

プルプル…

「あっシャンプー変えたんだ~」


「「なにー?!?!」」

「なんで会話通じあってるんだ?!」

「というかスライムに香水?!シャンプー?!」


困惑しながら雑貨屋を少し見てその後も服屋、魔道具屋、芸夢戦多を巡るまさにデートを満喫する。

そして、二人はそのままラブホ街へ…


「なぁ羊毛、ここまでにしようや」

「鬼村…そうだな、これ以上は野暮ってもんだな…」


ラブホ街を男二人で歩いていたので周りの視線に耐えれなくなった鬼村だったが勘違いされたまま引き返すことに。

トーマとレッドスライムは一軒のラブホへその間に入って行った。





「つ…遂に俺は今日大人の階段を登る!」


隣ではシャワーの出る音が聞こえる。

レッドスライムが先にシャワーを浴びているのだ。


「な、なにか意識しちゃうからテレビでも見るか…」


トーマは部屋に置かれたテレビのスイッチを入れる。


「ほらっ!もっと縛って欲しいんだろ!」

「ウゴゴゴゴゴ…」


テレビに映し出されたのは石像型の魔物ガーゴイルをサキュバスが縛ってるシーンだった。


「あわわわわわ?!?!」


慌ててテレビを消すトーマ。

緊張のあまり腰かけてたベットから転げ落ちる。

だがまだシャワーの流れる音が続いていたので落ち着いて座り直すトーマ。


「大丈夫だ。こう言う時は掌に使徒って書いて飲み込めば…」


民間療法でも信じれば立派な効果を発揮する。

そして、トーマは遂に自ら動くことにした。


「お、俺達付き合ってるんだから…い、良いよな!」


単純にただ待ってるだけで気が狂いそうになっていただけだった。

そして、風呂場のドアを開けると…

そこには誰も居なかった。


「あれ?えっ?あれっ?」


哀れ初めてここまで来たトーマであったが、レッドスライムの彼女もまた恥ずかしさのあまり長時間シャワーに当たってしまい溶けて排水溝から流れていってしまったのであった。


「うぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!」







数日後…


「よう、トーマ」

「あぁ…」

「なんだ?まだ振られた事を引きずってるのか?」

「仕方無いだろ、本気だったんだよ」

「元気だせよ、ほらっ来週の合コンお前も参加して新しい娘見つければ良いだろ」

「悪い、そんな気分じゃない」


一人トボトボと歩いていくトーマ。

その後ろ姿を見詰める鬼村。

そして、トーマに向かって親指を立ててウィンクする。

いや、トーマにではなくその背中にくっついているレッドスライムにだ。


実は今朝、鬼村の所にあのレッドスライムがメモを持ってやって来た。

そのメモには…

『トーマを試して両親に認めさせるために協力お願いします』

と書かれており鬼村はそれに承諾したのだった。


そして、トーマの歩くすぐ脇ではそんなトーマを見ているレッドスライムの両親が居るのであった。


「頑張れよトーマ」







一方その頃…


「おらぁ!お前人の女に手を出してどう落とし前つけるんじゃごるぁ!」

「違いますまだなにもしてませんー」

「まだって事はこれからするつもりってことやろがぁ!」


羊毛は逆ナンパされた相手の家に遊びに行って美人局に遭っていた。


「誰か助けてー!」

「逃げんなごるぁ!」






ここは人間界の裏に在る魔界。

今日も変わらず魔界はいつもの日常が過ぎていく。

これはその日常の些細な出来事のお話…


プルプル…

「えっ?」


トーマとレッドスライムに幸あれ




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